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【生活図鑑】

年金支給開始 68歳案見送り(No.380) 引き上げ 中長期的課題

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 年金の支給開始年齢を65歳から68歳〜70歳へ引き上げ、さらに現在、段階的に65歳へ引き上げているペースの前倒し案が社会保障審議会の部会で示されました。引き上げに伴う女性の年金、世代間格差などの課題を、厚労省のたたき台をもとに、再度考えてみましょう。

 厚生年金の支給開始年齢をめぐっては(1)三年に一歳のペースで引き上げている現行のスケジュールを、二年に一歳ずつに前倒しして引き上げる(2)現行のスケジュールで引き続き六十八歳まで引き上げる(3)現行のスケジュールを前倒しし、さらに同じペースで六十八歳まで引き上げる−を案として示しています。

 男性の場合、前倒しの具体的な対象は報酬比例部分のみの部分年金となります。また、六十八歳への引き上げは厚生年金だけでなく基礎年金も対象とされています。

 案では六十五歳までの前倒しを二〇一三年度から実施。二年に一歳のペースで引き上げを前倒しすれば、従来の年金支給開始時期が男性で一歳ないし二歳遅れることになります。

●加入背景異なる女性

 女性は雇用機会が均等でなかったため、厚生年金加入期間が男性に比べ短いのが現状です。このため、支給開始の引き上げも五年遅れで行ってきました。

 しかし、今回の案では男性と同じ引き上げスケジュールに前倒しするとしています。二年に一歳では男性二五年度、女性三〇年度の六十五歳支給が、男女とも二一年度に早まることになります。

 これでは一九五三年生まれの女性は六十歳から報酬比例部分を、六十四歳からは定額部分も支給される予定が、六十一歳から報酬比例部分のみの支給になります。生年によっては報酬比例部分を受けられない人が出てくるなど、男性に比べて影響が大きくなります。

 引き上げが中長期的課題とされ、当面は実施されないことから、こうした問題は起こらない見通しです。しかし、女性には年金加入、雇用の歴史、男女賃金格差の問題があります。女性の厚生年金の支給開始年齢を引き上げる場合、十分議論する必要があることをあらためて示したといえます。

 六十五歳から六十八歳への引き上げで基礎年金も対象になれば、自営業者の生活にも大きく影響します。また、既に決まったスケジュールを変えることは制度の信頼を損なうのではないか。高齢者雇用との関係なども議論が必要です。

●世代間の格差拡大へ

 引き上げで、世代間格差が拡大するのではないかとの懸念も出ています。世代による受給(平均余命まで)と負担(本人負担分のみ)で考えてみましょう。

 厚労省の試算(〇九年度時点の価値で換算)によると、受給と負担の倍率には格差があります。支給開始年齢を引き上げると、既に受給している世代ではなく、これから受給する世代に影響が出ます。

 厚生年金世帯のモデルは、夫が平均的収入(平均標準報酬三十六万円)で四十年間就業、妻は同年齢の専業主婦です。モデル世帯の月額受給額は約二十三万円です。

 仮に一九六〇年生まれの人から年金受給が六十八歳からとなった場合は年金額がどのくらい減るのでしょうか。支給が六十五歳から六十八歳へ単純に引き上げられたとすると、三年間でモデル世帯は約八百三十万円減ります。五十代前の世代の受給額が減少することになり、世代間格差が広がると指摘されています。

 中長期的課題とされた支給開始年齢の引き上げ問題。老後の生活設計に大きな影響を与えるだけに、雇用の在り方などを含め十分に議論する必要があります。

 制作・亀岡秀人

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