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【生活図鑑】

高額療養費制度 負担軽減へ見直し案(No.381) 所得区分細かく 年間上限も新設

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 医療費負担が高額化した際に、家計の負担軽減を図るのが「高額療養費制度」です。医療費の自己負担限度額が決められています。しかし、長期療養者や中低所得者の負担が重いとの指摘から、70歳未満の一般の所得区分の見直しや、新たに年間負担限度額を設ける見直し案と、その財源として受診時定額負担が議論されています。

●全体の8割が「一般」

 保険診療で掛かった医療費のうち、医療機関の窓口で支払う三割(年齢や所得により一割、二割)分が自己負担と呼ばれています。例えば、医療費が二百万円なら三割負担で六十万円、一割負担でも二十万円と家計には重荷です。

 そこで一カ月の自己負担限度額を設け、上限を超えた分を公的医療保険制度から給付することで家計の負担を軽減するのが高額療養費制度です。

 七十歳未満の場合、一カ月の限度額は「一般所得者」(会社員なら標準報酬月額五十三万円未満)で八万百円程度です。これ以上支払った分は戻ってきます。

 高額療養費の対象月が過去十二カ月に三回以上あると、四回目から自己負担の限度額が下がります。例えば、七十歳未満・一般所得者の限度額は四万四千四百円で、これを超える分は公的医療保険で受け持ちます。

 「一般」の所得区分にある人は全体の約八割を占めます(二〇〇九年度)。一方、一般以外に当たる「上位所得者」「低所得者」は各一割程度にすぎません。一般に当たる七千四百万人のうち年収の目安三百万円以下の層は二千七百万人に上り、五年間で三百万人も増えました。このため同じ一般でも所得に開きがあり、中低所得者には負担が重いと指摘されていました。

 見直し案では、一般の所得区分を三つに分けます。年収六百万円以上なら一カ月の自己負担限度額は八万円、三百万〜六百万円なら六万二千円、三百万円以下なら四万四千円にします。三百万円以下は自己負担が半分近くになり、負担が軽減されます。

●長期化で逆転現象も

 高額療養費の対象になるかならないかを見る自己負担分は、月初から月末までの一カ月間の金額で判定されます。

 限度額未満の自己負担で長期療養をする人は、高額療養費の対象外です。結果として、高額療養費制度の適用を受ける人の方が、長期的には自己負担が軽く済むという逆転現象も起きます。

 入院日数などは短期化が進んでいるとはいえ、関節リウマチ、乳がん、白血病など長期にわたって高額な服薬が必要な病気もあります。

 見直し案では、七十歳未満・一般所得者で五十万一千円など年間の自己負担限度額を設け、長期的な負担の軽減を図ることも掲げられています。

●財源は「受診時定額」

 厚生労働省の試算では、高額療養費の改善分として、初年度千三百億円が必要とされています。財源は、患者が病院にかかる初診・再診の際、百円を支払う「受診時定額負担」が提示されています。

 本来、給付に必要な財源は、加入者全員が保険料として負担するのが自然です。患者だけに負担を上乗せするのは、患者の負担増により受診を抑制するという考え方が見え隠れします。受診抑制で重症化するケースも考えられます。

 批判を受け、厚労省は低所得者の負担を五十円とする案も新たに提示しました。百円か五十円かといった額の問題なのでしょうか。今後は、医療費の増加に比例して定額負担が上がり続けることも危惧されます。

 以前から高額療養費は手続きが複雑で分かりにくいといった指摘もあります。財源を含め幅広い観点からの検討が必要です。

   編集・亀岡秀人

  デザイン・佐藤恵理

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