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【生活図鑑】

生活保護と就労(No.390) 働ける受給者の自立 模索続く

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 生活保護の受給者数が200万人を超え、終戦直後に並ぶ高い水準となっています。とくに、働くことのできる世帯主が失業などで保護を受けるケースが増えています。社会のセーフティーネットとして重要な役割を果たす生活保護制度ですが、国と地方自治体は膨らみ続ける事業費に頭を悩ませています。このため、受給者の就労意欲を高めるための制度も検討されています。

 被保護(受給)者数は一九九五年以来、増加傾向が続いてきました。追いうちをかけた形になったのが二〇〇八年の世界金融不安(リーマン・ショック)で、受給者の増加ペースも翌〇九年から一段と高まりました。一一年には二百六万人(八月速報)と戦後混乱期を上回りました。

●効果薄い支援事業

 受給世帯で見ると、一〇年度(月平均)は百四十一万世帯に上りました。世帯別では、高齢者世帯が全体の42・8%と最も多くなっています。その一方で「その他の世帯」が大幅に増加しており、割合は16・1%と二〇〇〇年度の7・4%から倍増しました。

 「その他の世帯」のうち、世帯主で二十歳から五十歳代の働ける「稼働可能な年齢層」が59%(〇九年度)も占めています。受給開始の理由は「収入・貯金の減少や喪失」が70%を占め、長引く不況で生活保護に頼らざるを得なくなったことがうかがえます。

 長引く不況や非正規雇用の増加などもあり、いったん生活保護を受給し始めると、再び定収入を得て生活保護から自立するのはなかなか容易ではありません。

 例えば、福祉事務所とハローワークが連携して実施している就職支援事業では、〇九年度に支援した約半数の六千九百三十二人が就職しました。しかし、このうち生活保護の終了に至ったのは八百九十四人と、12・9%にとどまりました。

 一〇年度も十九万七千七百余りの世帯が生活保護の受給を終了しました。しかし、一〇年九月時点で「就労による収入増」を理由に生活保護から脱却した割合は、保護終了のうち15・3%にすぎません。

●制度見直す動きも

 生活保護の実務を担う地方自治体は、制度の見直しを求めています。政令指定都市の市長会は一〇年十月、生活保護制度の抜本的な改革を求める案を政府・与党に提出しました。

 その中で、働ける受給者に対しては集中的に強力な就労支援を行うとともに、自立を支援する意味合いでボランティアや軽作業、短時間労働などへの参加を求める仕組みをつくることを提案しています。また、受給者の働く意欲を高めて自立を促すため、働いて得た収入の額に応じて一定額を積み立て、生活保護を終了する際に受け取るようにすることなども盛り込んでいます。

 これを受け、厚生労働省も一〇年十二月に、生活保護に関する中間報告をまとめ、期間を限定して集中的に就労支援を行うことなど、自立支援策などを打ち出しました。さらに、就職の見込みがあると判断されたのに求職者支援制度の職業訓練を受講しない場合、必要に応じて生活保護の支給を停止したり廃止する方針を示しました。

 ただ、生活保護の受給者や支援団体からは、慎重な対応を求める意見が出ています。求職活動をしても安定した仕事が見つからない実情や、病気で思うように自立への一歩が踏み出せない苦しさなど、当事者の生活の実態を知ってほしい−と不安を訴えています。

 保護が増加する中、生活保護の基準見直しも進んでおり、議論から目が離せません。

 編集・亀岡秀人

 デザイン・佐藤圭美

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