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【生活図鑑】

年金 特例の解消とは(No.402) 給付を3年間で2.5%引き下げへ

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 国民年金などの年金額は物価の変動に応じて毎年度見直されています。しかし、年金生活者に配慮して、物価が下落したときも年金額を据え置く特例を実施しました。この結果、予定されていた本来の年金水準よりも、2011年度で2.5%高く支給されています。これを3年かけ、段階的に年金額を引き下げる法案が国会に提出されました。その内容は?

 本来、年金額は消費者物価指数の変動率に応じて、毎年度改定されます。物価スライドと呼ばれるこの仕組みは、年金の実質的な価値を維持するために設けられたものです。物価が上がれば年金額も上がり、逆に物価が下がれば年金額も下がる仕組みです。

 しかし、年金生活者に配慮し、自公政権時代、物価下落時に三年間、年金額を下げずに据え置く特例措置が取られました。この結果、二〇〇二年度は本来の水準より1・7%高い年金額が支払われました。

 〇四年の年金制度改正で「物価が上昇しても年金額を上げない(物価下落時には年金額を下げる)」という仕組みを設け、物価上昇時に本来の水準との差を解消する方針でした。しかし、物価は一時上昇したものの、賃金の伸び悩みなどの影響で、本来の年金額との差は解消されませんでした。

●物価下落で差が拡大

 〇九年度からは逆にデフレで物価が下落に転じたため差が拡大、年金額は一一年度で本来よりも2・5%高い水準になっています。

 厚生労働省の推計では、この2・5%は約一兆円の年金給付費に当たり、〇〇年度から累計で七兆円給付費が膨らんだとしています。

 そこで年金財政が厳しいことを理由に、本来の年金水準との差を解消することになりました。三年間かけて本来の水準に戻す案です。年金額を一年目は0・9%、二年目と三年目は0・8%、それぞれ引き下げます。

 一二年度は十月に0・9%の引き下げを行います。物価下落に伴い、既に四月から0・3%引き下げられており、十月からは一一年度より合計1・2%の減額になります。

 会社員の夫と専業主婦によるモデル世帯の年金額(夫の老齢厚生年金+夫婦の老齢基礎年金)で見ると、四月からは月額約二三・一万円です。一一年度に比べて年額八千円程度の減少です。単純に計算すると十月からは月額二二・九万円とさらに減ります。

●デフレでも減る布石

 〇四年の改正では、年金財政が厳しいため、物価上昇分から原則として当面0・9%分を差し引いて年金額を決めるマクロ経済スライドの導入が決まりました。現役世代の賃金水準に対する年金水準(会社員の夫と専業主婦の年金の合計)を表す所得代替率(当時約59%)を、将来的には50%程度へと下げるための政策です。

 しかし、マクロ経済スライドは「特例水準が解消されてから」として、実施されていません。現役世代の賃金水準が下がる中、所得代替率はかえって62%程度に上昇しているとの指摘もあります。

 今回の特例水準の解消は、デフレ下でのマクロ経済スライド導入に向けた布石ともみられます。年金財政の健全化が重要な一方、現に年金収入を糧に生活している人にとって変革期に入るといえそうです。

 編集・亀岡秀人

 デザイン・伊藤潤

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