東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 生活図鑑 > 生活図鑑シリーズ・バックナンバー > 2012年の記事一覧 > 記事

ここから本文

【生活図鑑】

どうなった一体改革 年金(No.416) 社会保障改革 ぶれる理念

写真

 消費税率引き上げと一体とされてきた社会保障改革。しかし、当初から社会保障分野の説明が不十分だった上に、国民不在のまま民主、自民、公明の3党合意でさらに内容が修正され、関連法が成立しました。国民から十分な理解が得られたとは言えない中、一体、何がどうなったのか?年金関連を中心に見てみます。

 当初、政府案は低年金問題に対応するため、低所得者の基礎年金に一律月額六千円を、また免除期間に応じた額を、それぞれ加算するとしていました。対象は、家族全員が市町村民税非課税で、年金を含めた年間所得が約七十七万円以下の約五百万人でした。

 修正で、年金制度とは別に、福祉的な措置として最大で月額五千円を給付することになりました。保険料の未納期間によって減額され、当初の一律給付からは後退しました。

 また、年金を受給する権利を得る資格期間が原則二十五年と、欧米に比べ長すぎると批判されていました。資格期間を十年に短縮する案は、原案通りになりました。

 遺族基礎年金の支給を母子家庭だけでなく父子家庭にも拡大することや、会社員と公務員の年金一元化も原案のままでした。

●パートの適用は縮小

 政府・民主党は、非正規労働者などの処遇改善のため、社会保険への加入拡大を掲げました。当初、三百七十万人の非正規労働者の加入を目指しましたが、産業界の反対などで、結局、政府案は従業員数五百人超で月額賃金七万八千円以上の約四十五万人を対象とするとしていました。

 しかし、三党合意で、月額賃金を八万八千円以上とし、対象者も約二十五万人になりました。これは、二〇〇七年の自公案二十万人に限りなく近いものになりました。さらに、施行後三年以内に対象を拡大するとしていましたが、これも撤回、検討事項になり、大きく後退しました。

●議論深まらず消化不良

 政府案では低所得者の年金加算に合わせて、高所得者の基礎年金を最大二分の一、減額する予定でした。しかし、修正ではこの規定を削除、引き続き検討するとしたものの、実施は見送られました。

 政府・民主党が、低所得者の年金を充実し、高所得者には応分の負担を求めるという説明をしてきましたが、これを撤回したことになります。

 政府・民主党の社会保障の理念が問われたのが、最低保障年金の創設と後期高齢者医療制度の廃止を棚上げにし、今後、社会保障の将来像を一年かけて議論する国民会議に委ねたことです。

 これを盛り込んだ法律は「社会保障制度改革推進法」です。国民会議の創設だけが注目されましたが、この法律は今後の社会保障のあり方として「自助、共助および公助」と明記しました。基本は本人と家族や地域社会とし、国はその補完とも読める内容になっています。

 さらに、年金、医療、介護は「社会保険制度を基本とし、国などの負担は国民の負担の適正化に充てる」としました。これは、社会保障の財源を国民の保険料に求め、国などの役割を限定し、公の負担割合を低下させるのではないか、と危惧されています。

 自民党が主張する社会保障理念が中心になったもので、最低保障年金の創設など国の役割を明確にした考えや、高所得者への年金減額など、能力に応じて負担を求めるとした民主党理念とは反するとも言えます。

 しかし、消費税率引き上げのみに焦点が当たり、国会審議でもこうした社会保障のあり方についての議論は深まらず、消化不良の社会保障改革になりました。

 制作・亀岡秀人

ご注文はこちらから
 

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報