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【生活図鑑】

厚生年金基金の現状(No.423) 深刻な代行割れ 制度廃止も…

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 企業年金の厚生年金基金が苦況です。投資顧問会社のずさんな運用をきっかけに、構造的な問題が表面化しました。運用環境の厳しさなどから、基金数は最盛期の約3分の1に減少、残った基金は中小企業を中心としています。公的年金の代行割れ(積立金不足)が問題となり、政府・民主党は基金の廃止も打ち出しています。

 厚生年金基金は、企業が厚生年金の一部を代行し、独自に運用して給付の上乗せをする制度です。従業員の厚生年金保険料の一部と基金の掛け金を独自に運用し、あらかじめ約束した利率(確定給付、5・5%など)を乗せて、従業員に企業年金として給付、老後生活を豊かにするのが狙いでした。

 しかし、二〇一二年二月、ずさんな運用をしていた投資顧問会社、AIJ投資顧問に多くの厚生年金基金が運用依頼をしていたことが判明。金融庁は虚偽の運用報告などに対する罰則強化を打ち出しました。この事件では運用の難しさ以外に、基金の構造的な問題も浮かび上がりました。

●残るのは中小企業中心

 運用環境が良かった時期には、企業にとって基金は、代行部分を合わせた資金を効率的に資産運用できる点が利点といわれていました。しかし、経済の低迷で運用利回りが5%を超える予定利回りに届かない状況が続き、年金の原資となる積立金が不足する事態が多く発生。基金の解散なども増加してきました。

 このため、〇二年前後からは確定拠出年金や確定給付年金などの新年金制度への移行も本格的に始まりました。この結果、〇〇年度末に約千八百あった基金数は、一一年度末に約六百と三分の一に減りました。

 残る基金は、必ずしも資金力が豊かではない同業種の中小企業が共同して設立した「総合設立」が八割を占めています。しかも、高齢化が進展する中、基金全体では〇九年度から給付総額が掛け金収入を上回っていることが、基金の財政悪化に追い打ちをかけています。

 運用の不調により、基金独自の上乗せ部分の年金を減額せざるを得ないケースや、さらに公的年金である厚生年金の代行部分が立ちゆかない「代行割れ」も起こっています。厚生労働省によると、一一年度末時点で、代行割れが全体の約半分に当たる二百八十六基金で生じ、総額一兆一千百億円に及びます。

 新年金制度への移行や基金の解散をするにも、基金清算時には、代行部分に必要な積立金を国に返却するのがルールです。積立金の不足分を拠出できる企業しか基金を清算できず、資金力が乏しい中小企業にとっては現実的に困難です。

 このため、積み立て不足のリスクを抱えながら基金を存続せざるを得ないのが実態です。

●失敗のツケ国民に?

 厚労省は、特別対策本部で、十年程度など一定期間後に基金制度を廃止する方針を打ち出しました。一二年中に改革案をまとめる予定です。

 また、民主党ワーキングチームは四月の中間報告で、「経過期間を十分設けたうえで基金制度を廃止」と提言しています。自民党も七月に、破綻の恐れがある基金は、現存する資産の返上だけで解散できる仕組みを容認する方向性を示しました。

 しかし、どの案も代行割れをどのように埋め合わせるのかが課題になります。一部には、公的年金である厚生年金の積立金を活用する案も浮上しています。しかし、企業年金の失敗を公的年金の積立金や税金など国民負担で補うのは、モラルハザードにつながるという批判もあります。具体策の議論が欠かせません。

  編集・亀岡秀人

  デザイン・高橋達郎

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