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【生活図鑑】

生活保護の引き下げ(No.441) 逆転現象と物価下落を反映?

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 政府は生活保護費のうち、食費など日常生活費に当たる生活扶助を見直し、2013年8月から受給者の扶助費を最大10%引き下げる予定です。減額理由は、低所得世帯との逆転現象の是正や物価下落(デフレ)の影響と説明されています。どういうことでしょうか?

 生活保護費は、五年に一度、生活扶助基準の見直しを行っています。その結果、生活扶助が低所得者の消費水準を上回る「逆転現象」があった世帯も見受けられたと報告されました。

 具体的には、都市部で子どものいる多人数世帯の扶助が低所得世帯の支出を上回る傾向にありました。半面、高齢者世帯の扶助は低所得世帯の消費水準を下回る結果でした。

 また、期末一時扶助は、従来、人数倍の支給でした。しかし、人数倍では低所得世帯の消費水準を上回る結果でした。

 そこで、逆転現象の解消のため、都市部の四十代夫婦と小・中学生の子二人の世帯の生活扶助を引き下げるなど、調整を実施。また、期末一時扶助も単純な人数倍を改めます。

●比較の仕方に問題も

 見直しに問題はないのでしょうか? 検証で比較した低所得世帯は、総務省の全国消費実態調査を基に、所得(収入)水準を十等分し、最も所得の低い世帯です。

 〇七年の検証の際、この低所得世帯のうち、生活保護を受けているのは15・3%から29・6%と推計され、生活保護を受けられるのに受けていない世帯が多数いると推測されました。

 このため、生活保護水準以下の貧困世帯が多い層との比較では、逆転現象が起こるのも不思議ではないとの指摘もあります。報告書でも、こうした点に留意するよう記載されていました。

 引き下げの大きな要因は物価下落を反映したことです。〇八年と一一年の生活扶助に関わる品目の消費者物価を比較すると、4・78%下落していました。これにより、生活扶助の減額幅六百七十億円のうち五百八十億円はデフレ分になりました。

 今回、物価を考慮したのは、消費者物価分を減額しても、実質的な生活水準は保たれるとの考え方です。年金でも物価などを考慮し毎年、年金額が決定されています。

 調整によって70%の世帯は、見直しの影響が物価の下落幅以内としています。また、検証で低所得世帯の消費水準を下回っていた町村部の高齢者などの扶助は、減額されない結果になっています。

 一方、生活扶助は消費実態などを考慮し毎年改定され、〇八年以降は、据え置かれてきました。生活扶助が減額されたのは〇三年と〇四年の二回のみです。毎年の見直しでは据え置き、なぜ五年の基準見直しで引き下げるのでしょうか?

 また、〇八年は物価が高騰した年です。比較が〇七年やこの間の平均値ではなく、なぜ〇八年なのかなど、説明が不足しています。

 しかも、政府はデフレ解消を掲げており、物価が上昇した場合は「それに応じて扶助の引き上げもある」(田村憲久厚生労働相)としているだけです。

●低所得世帯に影響

 さらに、生活保護基準は▽住民税の非課税▽国民健康保険料の減免▽介護保険の利用料・保険料の減免▽就学援助金の利用▽保育料の免除−などの基準に関連し、低所得世帯に大きな影響が出ます。政府は「影響がないようにする」と対応を関係省庁などに指示しました。

 生活扶助の検証の仕方や、物価などをどのように反映していくのか、十分な議論が必要です。

  制作・亀岡秀人

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