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【生活図鑑】

国民総所得(GNI)って(No.459) 150万円アップ 収入増と直結せず

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 安倍晋三政権は1人当たり国民総所得(GNI)を10年間で150万円増やすことを「公約」しました。このGNIとはどいいう概念でしょうか。そもそも、この目標は実現できるのか。また、実現できても、国民の年収はそれだけ増えるのか。多くの疑問が残ります。

 安倍晋三政権は六月に決めた成長戦略で、一人当たり名目GNIを十年間で百五十万円増やすことを目標にしました。

 GNIはこれまであまり聞いたことのない概念だったので、国民にも戸惑いが生じています。「年収が百五十万円増える」と思った人もかなり多いようです。安倍首相本人も街頭演説で「年収を百五十万円増やす」と発言し、混乱に拍車を掛けました。

●三面等価の原則

 では、GNIとは何を意味するのでしょうか。

 それを説明するためにまず、現在、よく使われている経済指標の国内総生産(GDP)を考えてみましょう。これは、国内で生産された付加価値の総額です。つまり、企業や個人が生産したモノやサービスの総額から、中間の取引で重複する額を差し引いたものです。

 実は、このGDPと、国内の企業や公的機関、個人が投資や消費で支出した額である国内総支出(GDE)、国内の企業や個人が得た所得である国内総所得(GDI)は等しいのです。三面等価の原則です。一国の経済を生産、需要(支出)、分配(所得)の面から見たものですから、結果的に等しくなるのです。

 そしてGDPに、海外からの利子・配当所得と海外への利子・配当支払いの差額を足したものが国民総生産(GNP)です。日本は過去の経常黒字の累積などで債権大国になっています。このため、海外からの利子・配当所得の方が多く、ここ数年はGNPはGDPより十数兆円多いのです。

 そして、GDPなどについて三面等価が成立したのと同じ理由で、GNPと国民総支出(GNE)、GNIも等価になります。つまり、GNIは一九九〇年代前半まで主に使われていたGNPと、額は等しいのです。

●高い成長率必要

 世界銀行の調べでは、日本の一人当たりGNIは二〇〇一年には先進国で四位だったのですが、長引く不況のため一一年では十四位と後退しています。ですから、それを増やすこと自体は必要なことでしょう。

 ただ実現には、成長戦略にも書かれているように、十年間、年率名目3%の成長が必要です。これはバブル崩壊後、一度も実現したことのない高いハードルです。それに、一人当たりGNIが百五十万円増えても、個人の年収がそれだけ増えるわけではないのです。

 GNIには、個人の所得だけでなく、間接税や企業の所得、企業の設備・個人の住宅の減価償却なども含まれています。GNIから減価償却や間接税を引いた国民所得(NI)の方が、実際の所得に近いかもしれません。

 それでも、NIの中には、個人だけでなく、企業の所得も含まれており、個人の所得の中にも、例えば企業が負担する厚生年金保険料や健康保険料など広義の人件費も含まれています。一人当たりNIでも実際の年収というわけではありません。

 結局、個人の年収増は、GNIのようなマクロ経済指標を増やすだけでは実現しません。企業がこれまでのように利益を内部留保としてため込むのではなく、サラリーマンへの分配も増やすような方向に変える必要があります。

  制作・川北隆雄

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