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【生活図鑑】

派遣法改正論議(No.469) 労働者保護? それとも派遣のまま?

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 労働者派遣法の改正が労働政策審議会で議論されています。日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだ現行法の施行から1年余りで改正を議論するのは異例の事態です。しかも、派遣期間のあり方を含め、制度そのものの大幅な見直しにつながる議論もあります。労働者保護から見た主要なポイントは?

 見直しのきっかけは、厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」がまとめた報告書です。

 報告書では、業務での規制を見直し、派遣労働者と派遣元との雇用関係を、期間の定めのない(無期)契約か、有期契約かで整理。有期雇用派遣を不安定な働き方としました。有期雇用の派遣については、個人の派遣期間に上限(最長三年)を設けるほか、上限に達した場合は派遣元が無期雇用転換するなどの義務付けを提示しています。

 ただ、いずれかの義務付けであり、実効性があるのか疑問の声もあります。また、上限に達しなかった派遣労働者の雇用安定策はどうなるのかも定かではありません。

 一方、派遣元に無期雇用されている場合は、期間制限をなくすなどが示されました。これに伴い、現在は通訳や秘書など専門性の高い二十六業務についてのみ派遣期間の上限がない仕組みを廃止、有期か無期かで派遣期間が変わることなどが検討されました。

●一時的雇用でなくなる

 派遣労働はパートなどと違い、実際に働く企業(派遣先)が直接雇用していません。労働者は派遣元に雇用され、派遣先の指揮命令下で働くという特殊な働き方(間接雇用)です。派遣元や派遣先の責任があいまいになりがちです。このため、派遣労働は一時的な働き方とされてきました。日本だけでなく欧州連合(EU)でも同じです。

 この点の整理が十分行われず、派遣元との雇用が無期なら派遣期間の上限を定めないとすれば、派遣が一時的な働き方とは言えなくなります。

 厚労省の派遣労働者実態調査(二〇一三年三月)によると、派遣労働者が派遣の働き方を選んだ理由は「正社員としての職がなかった」、希望する働き方は「正社員」との答えがいずれも最も多くなっています。多くの労働者は派遣のまま働きたいとは望んでいません。

 また、最も多い派遣の年収は二百万円から三百万円未満でした。さらに派遣元の雇用が有期か無期かで比較すると、無期であっても、問題とした有期雇用の派遣年収と変わりがありません。年収から見る限り、無期だから有期より安定しているとは言えない状況です。

●均等待遇は後ろ向き

 同じ職場で働き、同じく指揮命令され、しかし派遣というだけで待遇が違うのは問題とされてきました。派遣で働く人の労働者保護は、派遣先正社員との均等待遇が最も効果があります。EUの派遣指令でも均等待遇が義務付けられ、人材派遣業界を含め労使とも支持しています。

 日本では正社員との均等ではなく、均衡を図るとされ、それも配慮義務にとどまっています。研究会では、均衡待遇をさらに進めていくことが必要としました。しかし、EUのような均等待遇は課題が多いとし、積極的に取り入れる方策を打ち出していません。

 また、実際に仕事の指揮命令をしているのは派遣先です。派遣先の責任についてもあいまいなままです。例えば、派遣労働者が待遇改善を求めて派遣先と団体交渉を行うことを認めるのか、など課題も多くあります。

 不安定な派遣の働き方を踏まえ、誰のための改正なのか、十分な議論が必要です。

 制作・亀岡秀人

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