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【生活図鑑】

配偶者控除見直し論議(NO.498) 女性の社会進出につながるか疑問

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 配偶者控除の見直し論議が進んでいます。専業主婦などに有利な同控除が、女性の就労意欲を弱めているとの認識からです。しかし女性の就労を増やすには、女性が働きやすい制度、基盤づくりが必要で、単に配偶者控除を縮減・廃止するのみでは、税負担だけを重くする結果になりかねません。

 安倍晋三首相の諮問機関である政府税制調査会は、配偶者控除の見直しの論議を始めました。同控除が女性の就労意欲を弱めているとの認識からです。経済成長を実現するには、労働力の減少を防がなければならず、そのためには女性労働力を活用する必要があるというのです。

 同控除は、例えば専業主婦やパートで働く妻がいる世帯で、夫の所得税と個人住民税の負担を軽減する制度です。所得税では三十八万円、住民税では三十三万円が所得から差し引かれます。

 所得税のケースを見ましょう。夫がサラリーマンなどの働き手の場合、妻がパート勤務に出ても年収が百三万円以下なら、夫は配偶者控除を受けられます。

 妻の年収が百三万円を超えても、百四十一万円に達しなければ夫には「配偶者特別控除」が適用され、夫の課税所得から三万〜三十八万円を差し引くことができます。いわゆる「百三万円の壁」を超えても、税制面で手取り額が直ちに逆転することはありません。

●年収増やしても…

 内閣府は、年収五百万円のサラリーマンの夫とパート勤務の妻の二人世帯での税負担などを、試算しました。妻の年収が百万円と、同百三十万円の場合を比較します。

 年収百三十万円のケースでは、妻は同百万円の時より三十万円多く稼ぎますが、夫の会社の配偶者手当がなくなるため、世帯総収入は十八万円しか増えません。そのうえ、配偶者控除(三十八万円)から配偶者特別控除(十一万円)に切り替わるので夫の税負担が増えます。妻にも新たに税負担や社会保険料負担が生じるため、世帯の手取り額は約四万九千円減ります。

●パート勤務を不利に

 配偶者控除と配偶者特別控除が廃止されたら、どうなるでしょうか。

 妻の年収が百万円のときには配偶者控除がなくなり、夫の所得税、住民税合わせて約七万円の負担増になります。同百三十万円のときも同様に、十一万円の配偶者特別控除がなくなるので、夫の税負担は約二万円増えます。

 この結果、妻の年収百三十万円と同百万円とでは、世帯の手取り額はほとんど同じになります。これでは、年収百万円だった妻がさらに百三十万円に収入を増やそうとするとは思えません。逆に、世帯の手取り額が同じなら、百三十万円だった妻が働く時間を減らすことも考えられます。また専業主婦世帯でも、働きに出ようと考える人がどの程度いるのか疑問です。

 結局、妻がパート的な働き方では、税制面で現状より不利になるため、百三十万円を大きく超えて働くことを促しているともいえます。

●税制面だけでは限界

 財務省は以前から配偶者控除の廃止を検討してきました。とくに、経済界などから法人税率の引き下げを求められており、その財源を確保したいという思惑があります。配偶者控除の廃止や縮減をすると、国民の税負担は確実に増えます。一方、女性の就労がどれだけ増えるかは定かではありません。

 女性の就労、社会進出を増やすには税制面だけでなく、保育所の増設や育児休業制度の充実などさまざまな基盤の整備が求められます。

    制作・川北隆雄

    編集・亀岡秀人  デザイン・佐藤恵理

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