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【生活図鑑】

奨学金(No.500) 卒業しても雇用不安定 返済苦しく

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 奨学金受給者が年々増加しています。2013年度には大学生の2.6人に1人が日本学生支援機構から借りています。1990年代後半から所得が減少したことが影響しています。一方、苦労して卒業しても非正規労働や働く貧困層などの増加で、十分な収入が得られず、返済が滞るケースが目立ちます。貸与(ローン)型ではなく給付型の奨学金拡大も指摘されていますが、なかなか進んでいません。

 日本学生支援機構の二〇一四年度の貸与者数は約百四十一万人で十六年前に比べて二・八倍、貸与金額は一兆一千七百四十五億円で同四・四倍に増えました。

 同機構は、大学生などへの奨学金貸与事業を無担保で行っており、成績優秀者が利用できる無利子奨学金とそれ以外の有利子奨学金があります。

 なかでも、有利子奨学金の急増が目立っています。一四年度の無利子奨学金の貸与者数は約四十五万人と十六年前の一・一五倍で、金額ベースでは三千六十八億円と同一・五倍でした。一方、有利子奨学金の貸与者数は約九十六万人で同八・七倍、金額では八千六百七十七億円と同一三・三倍に達しました。

●親の給与減り受給急増

 奨学金の受給が増加したのは、給与の減少と教育費の負担増加のためです。民間の年間平均給与を見ると二〇〇〇年以降、年々減少しています。これに合わせるように、奨学金の貸与率は上昇してきました。

 一二年度の平均貸与月額は、無利子五万七千円、有利子七万四千円。平均貸与総額は大学生で三百九万一千円、大学院生で三百七十八万五千円でした。大学生の二・六人に一人が同機構から奨学金を借りるなど、奨学金に頼る学生の姿が浮き彫りになっています。

 奨学金の返済は卒業後にスタートし、通常は最長二十年で終了します。同機構の貸与額が急増するにつれて、返済されるべき債権額も右肩上がりに増加しています。

 一一年度時点の債権額は四兆八千二百四億円で、九八年度に比べて三・九倍。既に返済期日を過ぎている三カ月以上の延滞額は八百五十五億円、同三・二倍でした。

 機構は、延滞時の督促の強化や債権回収業務の外部委託などで返済金の回収促進策を打ち出しています。一〇年度からは、延滞三カ月以上で延滞者の情報が個人信用情報機関へ登録されるようになりました。これらにより、機構では「延滞率は改善方向にある」としています。

●6割が年収200万円未満

 厳しい督促にもかかわらず延滞してしまうのは、どういう場合なのでしょうか。同機構が行っている三カ月以上延滞者の調査からは、非正規雇用で低収入に苦しむ延滞者の姿が浮かび上がってきました。

 無延滞者の場合、常勤社員が64・5%を占め、非常勤社員は8・4%だったのに対して、延滞者は常勤35・6%、非常勤15・1%、無職・失業中・求職中18・2%と不安定な雇用状況が際立っていました。収入面でも厳しく、無延滞者の場合は年収二百万円以上が全体の七割弱を占めたのに対して、延滞者の場合は年収二百万円未満が全体の六割強を占めました。

 延滞のきっかけは、収入減が77%でした。延滞が続いている理由としては、半数近くの人が「本人の低所得」を挙げています。

●給付型増やす対策を

 国内の奨学金は、返済が必要な貸与型が大半を占めています。一〇年度の場合、返済不要の給付型は金額ベースでわずか3・8%、人数ベースでも11%にすぎません。

 意欲ある学生が、卒業後に返済の不安を抱かず進学できるようにするためにも、給付型の奨学金の増加が望まれます。

 制作・中島有希

 編集・亀岡秀人

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