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【生活図鑑】

年金積立金(No.520) 公的年金のリスク運用 大丈夫?

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 老後の生活資金の柱である年金積立金の運用を行っている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、従来の国内債券中心から株式などリスク資産への投資拡大を決めました。成長戦略の一環として、政府が株式投資を重視することを受けたものです。しかし、年金の積立金は国民の保険料です。果たして、国民が納得する運用になるのでしょうか?

 厚生年金と国民年金の積立金は二〇一三年度末で約百三十二兆円に上っています。このうち、国の年金特別会計分を除いた約百二十七兆円をGPIFで運用しています。

 運用に際しては「安全、効率的かつ確実」(会計検査院、一二年十月)を基本とした運用を行うよう求められています。この結果、安全資産である国債など国内債券中心の運用を行ってきました。

●株式への積極投資

 しかし、株式などへの積極投資や海外投資などで、経済を活性化するとの政府の意向を受け、国内債券の運用を35%に縮小しました。一方、国内株式、外国株式を25%にそれぞれ拡大、外国債券も15%にしました。

 さらに、不動産、インフラ投資などのリスク性資産への投資を拡大する方針です。

 積立金とは、どういう位置付けでしょうか?

 〇四年に自民・公明連立政権で「百年安心プラン」と題した年金制度改革が実施されました。保険料を段階的に引き上げて固定し、年金額は現役世代の手取り収入の50%を確保することを百年間約束するものです。

 この間、積立金を取り崩しながら、国庫負担(税金)と保険料で年金を支払います。最終的に積立金は、おおむね一年程度の額しか残さない予定です。

 一三年十一月には有識者会議がGPIFの積極運用を促す報告書を提出。この中で、諸外国における株式などリスク性資産への積極投資の例として、米国カリフォルニア州職員退職制度やカナダなどのケースを紹介しています。

 しかし、カリフォルニア州とオランダの制度は、わが国では公的年金でなく企業年金(三階)に当たります。カナダ、スウェーデンは所得比例部分、わが国では厚生年金(二階)部分だけの積立金運用です。カナダでは、株式投資先と国策との整合性が問題になりました。

 ノルウェーの政府年金基金グローバルは、年金基金という名前がついているものの、同国特有の財政ファンドと指摘されています。わが国の基礎年金に当たる積立金の運用は別組織で行っています。

 これらは、基礎年金を含めた公的年金全体の積立金を運用するGPIFとは大きな違いがあります。紹介された基金が積極投資をしているから、わが国も、というのは説得力がありません。

 むしろ、米国の公的年金の積立金運用をする「社会保障信託基金」の例を参考にする必要があります。この運用は全て、市場に出回らない米国政府証券(債券)と定められています。これまで株式投資などの提言もありましたが、本来の目的に反する、株式購入を通じ私企業への介入になりかねない、などから見送られてきました。

●十分な説明が必要

 GPIFの組織のあり方も検討されています。経済協力開発機構(OECD)の年金基金のガイドラインなどによると、政府からの介入を許さない▽中立的な専門家の監査▽情報開示の徹底−などが求められています。

 積立金は国民(事業主負担も含む)の保険料です。積立金運用で利益が出ても、年金給付が将来増えるのか、損失が出た場合に責任は取れるのか、など疑問も多くあります。

 国民が求める運用になるのか、十分な説明と検証が必要です。

 制作・亀岡秀人

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