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【生活図鑑】

ILO基本条約と日本(No.527) 二つが未批准、問われる姿勢

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 労働者の基本的権利の尊重を掲げた国際労働機関(ILO)には、八つの基本労働条約があります。全加盟国に批准を求める重要な条約ですが、日本はこのうち「強制労働の廃止」(105号条約)と「雇用と職業における差別待遇の禁止」(111号)の2条約を批准していません。しかも、批准していないのは105号で11カ国、111号で13カ国しかありません。日本としてこれでよいのでしょうか?

 ILOには労働者の権利、保護条約が百八十九あります。なかでも「労働での基本原則と権利に関するILO宣言」で、労働組合結成や団体交渉の権利▽強制労働の廃止▽児童労働の撤廃▽雇用や職業での差別撤廃−の四原則の実現を明記。原則ごとに二条約ずつ、計八条約を基本労働条約(中核的労働基準)として定めています。

 加盟百八十五カ国のうち四分の三は、基本八条約をすべて批准しています。逆に、全く批准していないのはマーシャル諸島など三カ国のみです。EU諸国は基本条約をすべて批准。主要七カ国(G7)では、米国が六条約、日本、カナダが二条約を批准していません。また、中国、韓国は四条約が未批准です。

●国家公務員との関係

 強制労働の廃止を定めた一〇五号条約を日本が未批准なのを不思議に思う人も多くいます。条約には、ストライキ参加者に対する制裁禁止も盛り込まれています。

 日本では国家公務員の労働基本権(団結権・団体交渉権・団体行動権)を制限。また「国家公務員等の争議行為に関する規制」で、公務員のストライキなどに懲役刑を定めていることが条約に抵触するのではないかという見方もあり、批准に至っていません。

●差別撤廃に消極的?

 一一一号は、同一報酬を定めた一〇〇号と並び、差別待遇の撤廃を目指した条約です。人種、性別、宗教、政治的見解などの差別を禁止し、雇用、職業での機会・待遇の均等を求めています。

 未批准はわずか十三カ国です。G7では日本と米国のみ未批准です。

 憲法一四条には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条…により、政治的、経済的又(また)は社会的関係において、差別されない」と規定しています。憲法の趣旨から考えると批准の妨げになるものはなく、なぜ批准していないのかと疑問の声が上がるほどです。

 このため、人権団体や労働界をはじめとして批准を求める声が強くあります。しかし、同一報酬を定めた一〇〇号条約を批准した結果、日本は男女賃金格差などで、ILOから是正報告を求められてきました。こうした影響もあってか、経済界などは批准に前向きとはいえません。

 政府も「批准に当たって整合性を検討すべき国内法制の範囲を含め慎重な検討が必要」との答弁を繰り返し、批准の見通しは立っていません。

 条約を批准すれば、政策を推進する国内法の整備や政策の実効性への責任が伴います。だからといって、批准しないままでよいのでしょうか?

 日本はILO創設当初から参加し、政労使それぞれがILOの理事に就任している主要メンバーです。ILOは二〇一五年までに基本八条約の全批准を進めるキャンペーンを実施中です。今こそ、日本の真価が問われています。

◆国際的評価が心配

 横田洋三・人権教育啓発推進センター理事長(ILO条約勧告適用専門家委員会元委員長)の話 日本は基本二条約を批准していない。しかし、憲法などに照らし合わせると、批准するうえでの大きな障害はないはずだ。むしろ、批准していないことで、日本に対する国際的な評価が下がることが心配だ。一刻も早く八条約すべてを批准してもらいたい。

 制作・亀岡秀人

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