望 〜都の空から
東京の魅力や四季の彩り、さらに課題も空撮で紹介します
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【ハッピーDays】夜の路上読み聞かせ 大人に絵本の楽しさを2008年8月24日
聞かせ屋。けいたろう 坂口 慶(さかぐちけい)さん(26歳)ほろ酔い気分のサラリーマンやデート帰りのカップル、風呂おけを持った銭湯帰りのおじさんまでもが、「何だろう?」と足を止め、目を向ける。東京都足立区の北千住駅前。駅ビルの営業も終わった午後九時。「聞かせ屋。けいたろう」を名乗る坂口慶さんが、路上にずらりと並べた絵本を手に取って通る声で読み始めた。 坂口さんが路上で絵本を読み始めたのは、二〇〇六年十月。「絵本って読んでもらってこそ、楽しいもの。でも、大人になるとなかなか読んでくれる人がいない。だったら、ぼくが読んであげたいなと」 坂口さんは、東京都大田区内の保育園で非常勤の保育士として働く。本業は子どもたちが相手だが、夜の路上読み聞かせは、「大人に絵本の楽しさを伝えたい」と週一回続ける。 自分も大人になって絵本の魅力を知った。短大の保育科時代、毎回授業の最初に一冊ずつ読んでくれた先生がいた。「身を乗り出して聞いていましたね」 その楽しさが忘れられず、「いつか自分も読んでみたい」と思っていた。立ち寄った古本屋でたまたま先生が読んでくれた絵本を見つけた。「練習して上手に読めるようになってから、とか考えると一歩が出ないと思った」。先生が読んでくれた本をまずは集めた。 最初の夜。足を止める人もなく、恥ずかしい気持ちでいっぱいになっていた時、「何やってんの?」と女子高生二人が軽いノリで声を掛けてきた。「かわいそうなぞう」を読み終えると、二人は涙をこぼした。「届いた」と感じた。そして「続けよう」と決めた。 足を開いて絵本を持ち、時折くるりと回したりもするスタイルは独特。最近は、ギターや鍵盤ハーモニカでBGMを奏でてくれる仲間と共演する。「絵本が大好きだから作家さんの思いを大切にしたい。でも、まずはぼくを通じて絵本に触れてもらえたら」と語る。 北千住駅前は、ミュージシャンを目指した高校時代、ギターを抱えて立ったほろ苦い思い出の場所でもある。「歌で飯を食いたい」という夢は簡単にはかなわなかった。 でも今はその場所で、絵本を通した交流が始まっている。「デート中のカップルのためだけに読んで喜ばれたり、酔ったおじさんに『おいこれ読んでくれよ』なんて言われたり。出会いが面白い」。蒸し暑い夏の夜、一時間の“ライブ”にじっくりと耳を傾けていた男性(22)は、「映画やテレビと違い、それぞれが自由に受け止められる気がする」と話した。 最近は絵本店などからも依頼され、活動の場を広げている坂口さん。「でも原点は路上。一日の終わりにちょっとホッとしたり、くすっと笑って、また明日から頑張ろうと思ってもらえたら」 (小林由比) 北千住駅 JRや地下鉄、つくばエクスプレスが乗り入れ、東京・下町有数のターミナル駅。駅周辺は、商業施設のほか、劇場「シアター1010」や、2006年に開設された東京芸術大千住キャンパスなどがあり、若者たちでにぎわう。駅西口の歩行者デッキには、ストリートミュージシャンの姿も多い。 「聞かせ屋。けいたろう」の路上読み聞かせは、毎週木曜日午後9時から。約1時間で10冊ほどを読む。その日読む本以外にも、たくさんの作品を路上に並べ、観客に手に取ってもらっている。坂口さんの活動予定や、お薦め絵本の紹介などはブログに掲載。「聞かせ屋。」で検索できる。
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