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「普通の人」出馬できる 目黒のデザイナー 脱原発訴え

演説を中断し、有権者と原発について話す丸子安子さん=21日夜、東京都目黒区の東急西小山駅前で

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 有権者が持つ権利は一票だけではない。その受け皿となる被選挙権も保障されている。脱原発を目指す市民団体は、仲間を国政に送り込みたいと衆院選の準備を進めるが、多額の選挙費用や、出馬を特別視しがちな世間の壁に阻まれ、出馬を決意できたのはわずか数人。政治との距離を縮めたい「普通の人」の苦闘は選挙戦の前から始まっている。 (小嶋麻友美)

 「全くの素人選挙。でも私たちの一票で社会は変わります」

 二十一日夜、東京都目黒区内の駅前。この日届いたばかりの拡声器を肩に掛け、同区のデザイナー丸子安子さん(44)が呼び掛けていた。興味を持って近づいてくれる人もいれば、原発推進の立場から議論を仕掛けてくる人もいる。

 脱原発を目指す市民団体グリーンアクティブを後ろ盾に、地元東京5区(目黒区と世田谷区の一部)からの出馬を目指す。資金援助はないため、選挙区と比例代表の重複立候補に必要な供託金(六百万円)などの経費は、インターネットでカンパを呼び掛けている。ちらし配りを手伝うのは、脱原発のデモや集会で知り合った仲間だ。「ここまで来るにも何度も挫折しそうになった」

 壁は、「候補者乱立を防ぐ」という名目で設けられている世界一高い供託金だけではなかった。二人の娘の母親でもある丸子さんは福島原発事故後、放射能汚染から子どもを守る活動などをしてきたが、出馬を知って離れた仲間がいた。「売名行為」と陰口もたたかれた。「私は何も変わっていないのに『政治には関われない』と言われる」

 グリーンアクティブは当初、四十人ほどの擁立を目指したが、実際に手を挙げた人はまだ数人。発起人のマエキタミヤコさん(48)は「『まさか私が』という反応が七、八割。政治ムラに近寄りたくないという感じが根強い」と話す。

 公職選挙法が、戸別訪問の禁止など選挙運動を細かく制限しているため「関わると逮捕される」と恐れる人も多いという。

 「有権者は望めば立候補できるはずなのに、まるで議員は別の立場のように思われ、両者が分断されている。子どもたちへの投票教育を怠り、あれもこれもだめという選挙制度が、日本の民主主義をだめにしてきた」と指摘する。

 厳しい環境の中で出馬を決めた丸子さんは、原発事故までは仕事と子育てに追われ、政治活動の経験はなかった。昨年六月、脱原発の会合に初めて参加したり、以後は勉強会を開いたり、原発再稼働の是非を問う都民投票条例の制定を求める運動にも加わった。条例を都議会で否決され、政治の場に出る決意を後押しされた。

 「署名やデモの次の自然な活動の姿として、今がある。誰だって選挙に出られることを知ってほしい」と力を込める。

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 東京5区からは他に民主党前職の手塚仁雄(46)、自民党元職の若宮健嗣(51)、日本維新の会新人の渡辺徹(34)、共産党新人の三浦岩男(63)、みんなの党新人の三谷英弘(36)、政治団体・幸福実現党新人の曽我周作(33)の各氏が立候補を予定している。