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【スポーツ】

<回顧2016>(9)リオ柔道金・大野 圧倒的に強く美しく

リオ五輪で圧倒的な強さを見せて優勝した大野将平(左)=共同

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 12月上旬に行われた柔道の国際大会グランドスラム東京で、一つの場面に目がとまった。優勢勝ちした男子のある外国人選手が、対戦相手にまたがった状態でガッツポーズと雄たけび。喜ぶ気持ちは分かるが、敗者への敬意を欠く態度と映った。そして、リオデジャネイロ五輪で金メダルに輝いた男子73キロ級の大野将平(旭化成)を思い出した。

 リオ五輪で大野は全5試合のうち決勝を含む4試合で一本勝ち。五輪では日本男子に2008年の北京大会以来となる金メダルをもたらした。勝ち上がりを見る中で、大野の優勝は揺るがないだろうと心の準備はしていたが、いざ金メダルが決まった後の振る舞いは想像を超えていた。

 表情を変えず、もちろんガッツポーズもない。深く、丁寧に礼をして、畳を下りてやっと笑みがこぼれた。「対人競技なので相手を敬おうと思っていた。よく気持ちを抑えられたと思う」と大野。史上初の金メダルなしに終わったロンドン五輪の雪辱を果たし、同時に柔道発祥国として競技の神髄を見せつける。エースの面目躍如だった。

 各国の格闘技の要素が混ざり合い、柔道は「JUDO」へと変化してきた。その中でも大野は正しく組んで投げる伝統的な日本の柔道で頂点に立ち、本来の競技の魅力や、日本柔道が目指す方向性の再確認にもなった。

 もちろん技術や体力、期待と重圧を受け止められる精神力など、大野が積み上げた高みは一朝一夕に到達できるものではない。それでも、王者がかねて公言していた「圧倒的に勝つ」というセリフを、リオ五輪で銅メダルだった81キロ級の永瀬貴規(旭化成)や、66キロ級のホープの阿部一二三(日体大)らも口にするようになった。

 おりしも国際柔道連盟(IJF)が2020年東京五輪に向けた新ルールを発表し、「有効」を廃止するなど、より「一本」での決着を指向する内容となった。大野も来年の世界選手権出場を目指し、年明けから戦列に復帰する見通しという。圧倒的に強く、美しい柔道を再び披露してほしい。 (井上仁)

 =おわり

 

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