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【スポーツ】

<検証 日馬富士暴行事件>(上)協会指導力 課題積み残し 鈍い初動、甘い認識

臨時評議員会を終え、記者会見する池坊保子議長(左)=両国国技館で

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 元横綱日馬富士の暴行事件に端を発した一連の騒動は、関係者の処分が全て終わって一つの節目を迎えた。事件発生から2カ月あまり。日本相撲協会の危機管理委員会が公表した調査報告をもとに、今回の騒動の問題点や今後に向けた課題を検証する。 (平松功嗣)

 昨年11月1日、警察から協会に電話がかかってきた。「被害届が提出されており、日馬富士、白鵬、鶴竜、照ノ富士から話を聞きたい」。事件の第一報だったが、その後の協会の動きは鈍かった。

 調査報告では、八角理事長(元横綱北勝海)ら協会執行部が「緊急事態が発生しているとの認識を持たなかった」と指摘する。当事者から詳しい報告はなく、和解したという情報もあり、師匠同士で話し合いが持たれると考えていたという。

 伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は弟子の元日馬富士に暴行の事実を確認し、3日には協会に報告した。現役の横綱が別の力士に暴力をふるってけがを負わせた事実が分かった時点で、当事者同士の話し合いですむ問題ではないと判断すべきだった。暴力に対する認識の甘さが根底にあったのかもしれない。11日の理事会でも事件は議題にならず、両親方に話し合うよう要請するにとどまった。

 「警察の取り調べ前に関係者に触れないでもらいたい」と警察から指示があり、力士にとってもっとも大切な本場所を控えていたことも、調査にすぐ取りかかれなかった理由とされる。しかし、九州場所初日は12日で、事件を把握してから1週間以上あった。事態の重さを考えればすぐに警察の捜査に応じ、協会も調査を始めても良かった。少なくとも、現場となった飲食店の店員ら力士以外の関係者には話を聞けたはずだ。

 事件が報道された後に、協会は休場した力士から調査を始めたが、出場した力士は相撲に専念させた。その間、不確実だったり誤っていたりするものも含め、情報が入り乱れた。「ビール瓶で殴った」という話も同席した力士の誤解に基づいた情報だった。この力士に早く事情が聴けていれば、不要な混乱は防げた。

 評議員会の池坊議長は「貴乃花理事が報告義務を怠り、危機管理委員会の調査を拒否し続けたことで、今回の問題がここまで大きくなり、長引いた」と述べた。一方で、危機管理委の調査報告では貴乃花親方の責任を重くみつつ、「より早期に危機管理委員会の立ち上げを検討する余地があったと思われ、協会執行部の対応に問題がなかったとは言えない」とする。事件への対応に最初からつまずき、不誠実な対応をする貴乃花親方を執行部が指導・監督できなかったことも、騒動が長引いた理由の一つだ。

 貴乃花親方は相変わらず口を開かないが、今回の行動の背景には執行部への不満があるとみられる。春に予定される理事改選で再び理事になるか否かはともかく、内部対立を抱えたままでは同じ問題は繰り返される。八角理事長は「より一層気を引き締めて内部統制を図りたい」とコメントした。強力なリーダーシップが、今後も求められる。

 

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