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【スポーツ】

<検証 日馬富士暴行事件>(下)暴力なき指導、課題

引退会見で、唇をかみしめうつむく元日馬富士=昨年11月、福岡県太宰府市で

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 昨年10月25日深夜から26日未明、鳥取市内の飲食店でL字形のソファに腰掛けていたのはモンゴル人力士だけでなく、日本人力士や鳥取城北高校の関係者もいた。暴行に至ったいきさつについては、元横綱日馬富士と当時平幕だった十両貴ノ岩とで見解が異なる。元日馬富士は横綱白鵬の説教の最中に貴ノ岩がスマートフォンの操作をした非礼を理由に挙げる。一方で貴ノ岩は「説教は一段落した」と思っていた。この認識の違いが、悲劇を生んだ。

 「大横綱(白鵬)が話をしているときに、なんで携帯(電話)をいじっているんだ」。元横綱がたしなめると、貴ノ岩は否定したり生返事をしたり。この態度に元横綱は腹を立て、暴行が始まった。

 白鵬、鶴竜の両横綱をはじめ、力士ではない教育関係者もいながら、だれも暴行を止められなかった。日本相撲協会の危機管理委員会が公表した調査報告では、「指導のために行われているとの思いがあった」ことの他に、「角界の第一人者である白鵬がいたため、同人を差し置いて止めに入ることにためらいがあった」ことも理由として挙げ、「制止するタイミングがつかみ難かった」と指摘する。

 番付社会の大相撲には厳しい上下関係がある。横綱が平幕力士を叱るのを制することができるのは横綱か親方衆くらい。だから元日馬富士の暴力を防げる立場にいた白鵬と鶴竜が、重い減給処分の対象となった。

 元横綱は引退会見で「彼のために殴って正しいことをしているという気持ちが強すぎると、行きすぎることがある」と振り返った。「行きすぎ」さえしなければ、指導のための暴力も「正しいこと」との認識がうかがえる。

 調査報告では「われわれは若い時に殴られて悔しい思いをし、それで気持ちも強くなって強い力士になった」というベテラン力士の言葉を紹介。過去の指導方法を否定して暴力行為を排除することと、厳しく若手力士を鍛えることが「一見すると矛盾を生じかねない困難な課題」と受け止める。

 外部理事でもある危機管理委の高野利雄委員長は記者会見で「協会員全員が貴ノ岩の無念の気持ちを思い出すことが大事」と訴え、強調した。

 「指導という名の暴力は、常に強い者が弱い者に対して与える。弱い立場にある者の立場に立ってこういう問題を強く認識し、指導のための暴力が容認されないと確認しない限り、同様の暴力事件を防ぐことはできない」 (平松功嗣)

 

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