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【スポーツ】

韓国、北朝鮮、IOCの五輪巡る思惑

20日、ローザンヌで、4者会談の合意書を手にする(左から)李熙範・平昌五輪大会組織委員会会長、金日国・北朝鮮オリンピック委員会委員長、IOCのバッハ会長、韓国の都鍾煥・文化体育観光相=共同

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 北朝鮮の平昌(ピョンチャン)冬季五輪参加協議は、対話機運を盛り上げたい韓国と、国際包囲網の分断を狙う北朝鮮、五輪の求心力低下を危ぶむ国際オリンピック委員会(IOC)と、それぞれの思惑が一致して急展開し、大会組織委員会を含めた二十日の四者会談で詳細が決まった。しかし、過去の合同入場行進などは北朝鮮の核問題の解決に結びついておらず、政治判断優先の「南北融和ショー」に冷めた見方も広がる。

◆平和アピール

 「五輪の目的は対話であり、希望と平和の象徴。困難な時代に世界が一つになれる唯一のイベントだ」。IOCのバッハ会長は年頭のあいさつで五輪の価値を訴えた。南北間の緊張が続く中、IOCは積極的に北朝鮮の参加を促し、特別推薦枠の付与を約束。二十日の四者会談に先立って公表した情報では、二〇一四年と早い段階から北朝鮮側に働き掛けてきたと強調した。一六年リオデジャネイロ五輪で結成した難民選手団が高評価を得た同会長には平和貢献をアピールする姿勢が目立つ。

 背景には「五輪離れ」への危機感がある。開催都市に巨額の財政負担を強いる一大イベントには近年厳しい目が注がれ、住民の反対で招致から撤退する都市が続出。招致活動に絡むIOC委員の買収疑惑は依然としてくすぶっている。

 ロシアの国ぐるみのドーピング問題も五輪に影を落とした。同国を平昌大会から締め出さなかった処分には批判の声もあり「ロシアへの対応でバッハ会長は苦しい立場に追い込まれている」とみるIOC委員もいる。五輪のイメージ悪化を避け、自らに向かう矛先をそらす意味でも、北朝鮮は格好の話題だった。

◆薄い効果

 南北のスポーツ交流は韓国の革新政権時代を中心に何度も行われてきたが、北朝鮮の核・ミサイル開発阻止にほとんど効果をもたらしていない。

 「太陽政策」を掲げた金大中(キムデジュン)政権は〇〇年シドニー五輪で初の南北合同入場行進を実現させたが、北朝鮮はミサイル開発を継続。後任の盧武鉉(ノムヒョン)政権も〇六年トリノ冬季五輪で合同行進を実施したが、北朝鮮はその約八カ月後に初の核実験を行った。

 南北関係が冷え込んだ保守政権下でも北朝鮮は一四年の仁川(インチョン)アジア大会に選手を派遣、閉会式に合わせ金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の複数の側近が電撃的に訪韓した。対話再開の機運が高まったが、長続きしなかった。

 九年ぶりの革新系として昨年発足した文在寅(ムンジェイン)政権は、平昌大会への参加を何度も提案。北朝鮮は返事の代わりと言わんばかりに核実験や弾道ミサイル発射を繰り返したが、年が変わると態度を急変させた。ただ「融和に本気ならもっと早い段階で参加表明したはず」との指摘も。北朝鮮には韓国を取り込み、国際社会の包囲網に風穴をあける狙いがあるとみられる。

◆裏切り

 北朝鮮の軟化を受けた文政権は、念願の対話再開に前のめり感が際立つ。十九日にはスポーツ行政を所管する文化体育観光省が、インドネシアで開催される今夏のアジア大会でも合同行進や合同応援を推進する方針を示したと報じられた。

 南北の和解と平和の象徴であり、シドニーやトリノの合同入場行進で韓国国民から熱狂的に歓迎された「統一旗」の使用を巡り、反対が賛成を上回る世論調査結果も出ている。韓国紙記者は「さんざん裏切られており、スポーツ交流の無意味さに気付き始めたのでは」と指摘した。(ローザンヌ・共同)

 

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