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【スポーツ】

「勝者」不在 山中引退へ 「1階級上」ネリに屈す

ルイス・ネリ−山中慎介2回、ルイス・ネリ(左)にこの回3度目のダウンを奪われた山中慎介=東京・両国国技館で

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◇ボクシングW世界戦 WBCバンタム級

 ダブル世界戦は1日、東京・両国国技館で行われ、世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級では山中慎介(帝拳)がルイス・ネリ(メキシコ)との再戦で2回1分3秒TKO負けし、試合後に現役引退の意向を表明した。ネリは前日計量に失敗して王座剥奪となったため、王座は空位のまま。

 山中はネリの攻めに守勢となり、1回にダウンを奪われた。2回にも続けてダウンを喫し、レフェリーが試合を止めた。両者は昨年8月に対戦し、山中が4回TKO負けした。その後、ネリがドーピング検査に陽性反応を示したことが判明。WBCは意図的摂取の証拠がないとして王座保持を認め、再戦を命じた。

 国際ボクシング連盟(IBF)スーパーバンタム級は王者の岩佐亮佑(セレス)が同級13位のエルネスト・サウロン(フィリピン)を3−0の判定で下し、初防衛に成功した。

 戦績は35歳の山中が31戦27勝(19KO)2敗2分け、23歳のネリは26戦全勝(20KO)。28歳の岩佐が27戦25勝(16KO)2敗、28歳のサウロンは25戦21勝(8KO)3敗1分け。

 こんなにやるせない試合があるだろうか。虚無感、怒り、残酷さ…。山中が2回TKO負け。「これが最後ですよ。これで終わり」。試合後の控室で引退を表明した。

 初回。山中は接近戦となり、右のカウンターをもらった。スリップダウン。だが、これが効いた。その後もダウンを奪われ、2回には3度のダウン。「見えないパンチ、効くパンチで慌てた」「相手は体が柔らかくて、僕より強かった」。どこまでも潔い。

 しかし、この試合において「勝者」はいない。ましてや、力量や技術で語るべきものは何ひとつない。ボクシングとは細分化された階級制のスポーツだ。前日計量でネリは体重超過で失格。その時点で、この競技の前提が崩れた。ネリはリングに上がる資格はなかったはずだ。

 減量とは肉体を削る作業だという。体重を落とせば、当然のように体に力が入らなくなり、パワーは落ちていく。練習でも動きは鈍くなり、コンディションを整えるのは難しい。対するネリはさほど食事制限もなく、計量前日まで存分に体を動かしていた。パワーと体調面で「1階級上」のネリが優位なのは明らかだった。

 中止になってもおかしくない闘いが、ペナルティーもなく挙行された。山中は切に願う。「計量のルール。ボクシング界全体できちんとしてほしい」。この言葉を重く受け止めなくてはならない。

 昨年8月、プロ初黒星を喫し、ネリに借りを返すために現役続行を決めた。「結果は出なかったけど、現役を続けてよかった。悔いなく調整できた。一生懸命やった。そこは誇りに思う」。最後まで相手に全力で向かっていた。美学を貫いた。誰も山中のことを「敗者」だとは思っていない。(森合正範)

 

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