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【スポーツ】

遅きに失した「緊急事態」 ハリル氏解任 あと2カ月 空中分解回避へ

記者会見で質問を聞く日本サッカー協会の田嶋幸三会長=東京都文京区のJFAハウスで

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 日本サッカー協会は9日、成績不振などで解任したバヒド・ハリルホジッチ日本代表監督(65)の後任に西野朗技術委員長(63)が就いたと発表した。6月14日開幕のワールドカップ(W杯)ロシア大会が迫る中での緊急事態。新チームは限られた準備期間で大舞台に臨むことになる。

 W杯が約2カ月後に迫る時期に、なぜ日本サッカー協会はハリルホジッチ監督の解任を決断したのか。遅きに失した感が否めない監督交代の理由を、田嶋幸三会長は神妙な表情で「緊急事態」という言葉で表現した。

 全ては3月の欧州遠征だった。現地でマリ、ウクライナと親善試合を戦い1分け1敗。内容も低調で、縦に速さを求める戦術ばかりを強調する監督に対し、多くの選手から不満が噴出した。大迫勇也(ケルン)は「いい子ばかりでは成長しない」と漏らした。 W杯に向けチームを固める重要な遠征で、空中分解の恐れがある事態に発展。田嶋会長は「コミュニケーションや信頼関係(の問題)が出てきてしまった。むざむざ見ていられなかった。1パーセントでもW杯で勝つ可能性を追い求めた」と経緯を明かした。

 ただ、これまでも解任に踏み切るタイミングはあった。昨年12月の東アジアE−1選手権で韓国に1−4の大敗を喫した際も手腕が疑問視された。この時期から協会では解任を議論していたというが「替えれば必ず良くなる魔法があればやるが、リスクもある」と続投を決め、結果は裏目に出た。「緊急事態」は協会自らが招いた側面もある。

 田嶋会長は西野氏に後任を託した理由を「W杯まで2カ月しかなく、内部昇格しかない」と説明。ハリルホジッチ監督の解任がもっと早ければ「西野さんでなかったかも」といい、より望ましい人材の代案があったことも認めた。西野氏も「このタイミングでの交代は非常に難しい」とのコメントを出した。

 田嶋会長は異例の監督解任劇を「時間はないが、こういうときに日本人は力を発揮できる」と前向きに捉えた。だが、精神論に訴えるその言葉はあまりに無計画で、説得力に欠ける。 (対比地貴浩)

ウクライナ戦で指示を出すサッカー日本代表のハリルホジッチ監督=3月27日、ベルギー・リエージュで(共同)

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◆ハリル氏「縦に速く」戦術固執

 ハリルホジッチ監督は就任以来、時に中盤での組み立てを省いても縦にボールを速く入れるカウンター攻撃を強く要求。結果として戦い方が単調になって成績不振に陥り、解任へと追い込まれた。

 近年の日本は中盤でパスをつなぎ、相手守備網を崩すサッカーを志向してきた。ただ、その戦術で挑んだ2014年のW杯ブラジル大会では、1勝もできずに1次リーグ敗退。この反省の下、日本の目標であるW杯初の8強入りを託されたハリルホジッチ監督は大きくかじを切った。

 「デュエル」。フランス語で「決闘」を意味する言葉で球際の激しさを求め続け「縦へ速い攻撃」を掲げた。田嶋会長も「速い攻撃も必要」と理解を示した。だが誤算だったのは指揮官が多くの試合で「縦に速く」と自身の戦術に固執しすぎた点。相手が引いて守り、裏にスペースがない場面でもこだわり、たびたび攻撃が機能不全に陥った。

 チームに規律を求めるため高圧的に選手と接する態度も裏目に。若手や代表歴の浅い選手を中心に意見を言える環境ではなくなったことも、状況を悪化させた。

 この日の会見で田嶋会長は、西野監督に対し「しっかりボールをつなぐこと」「日本らしいサッカーをやってほしい」と原点回帰を希望した。日本の強化を目指してハリルホジッチ監督が試みた独自の手法は、志半ばで終わりを告げた。(対比地貴浩)

 <バヒド・ハリルホジッチ氏> 現役時代はFWで主にフランスで活躍。旧ユーゴスラビア代表で1982年W杯に出場した。現役引退後は指導者に転じ、モロッコやフランスなどのクラブで監督を歴任。コートジボワールとアルジェリアで代表監督を務め、2014年W杯はアルジェリアを初の16強に導いた。15年3月に日本代表監督に就任。ボスニア・ヘルツェゴビナ出身。65歳。

 

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