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【スポーツ】

静寂を味方に 日本新V 日本選手権 円盤投げ 聴覚障害の湯上選手

写真

 たとえ耳に届かなくても、スタンドの大歓声が力になったという。二十四日に山口市で開かれた陸上の日本選手権の男子円盤投げで、生まれつき聴覚障害のある湯上剛輝(まさてる)選手(25)=トヨタ自動車、写真=が、62メートル16の日本記録で初優勝を果たした。静寂の世界で競技と向き合い、ひのき舞台でビッグスローを連発した。

 放たれた円盤が大きな弧を描き、60メートル74の日本記録を示す赤いラインを越えた。この三投目で61メートル02をマークすると、四投目、五投目でさらに記録を更新。一投ごとに観衆から上がるどよめきは、ほとんど聞こえていない。「でも、会場の雰囲気で盛り上がっているのは分かっていた」

 滋賀県甲賀市出身。先天性の疾患で両耳とも聞こえづらく、小学生の時に聴力を支える人工内耳を左耳に埋めた。スポーツは好きだったが、耳にボールが当たる恐れがある球技はできない。中学校から陸上を始め、高校で出合った円盤投げが「頑張れば記録が伸びる」と性に合った。

 滋賀・守山高から中京大、トヨタ自動車と進み、第一線で競技を続ける。補聴器がないと日常会話も難しく、試合の場内アナウンスやインタビューも聞き取りづらいが、それがハンディとは思っていない。

 「何も聞こえないのが良かった。中途半端に聞こえるとバランスが崩れるかもしれないから」。障害を前向きに捉えながら、昨年からは背中と腰回りを鍛錬。体重が一〇七キロまで増えて回転の中心軸が強くなり、59メートル30だった自己記録の大幅更新につなげた。

 世界との差が大きい男子円盤投げは、少なくとも65メートルは投げないと五輪や世界選手権に出場することができない。夢の二〇二〇年東京五輪を見据えて、「これからもっと精進したい」と決意を固めている。 (佐藤航)

 

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