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【スポーツ】

阿部兄妹が同時優勝 柔道世界選手権

 【バクー=共同】世界選手権第2日は21日、当地で男女各1階級が行われ、男子66キロ級の阿部一二三(ひふみ=日体大)が2連覇を果たし、阿部の妹で女子52キロ級の18歳、阿部詩(うた=兵庫・夙川学院高)も初出場優勝を達成した。日本勢で兄妹の同時優勝は史上初。

 阿部一は初戦の2回戦から6試合を勝ち上がり、4試合で一本勝ちした。準決勝ではリオデジャネイロ五輪2位の安バウル(韓国)に延長の末、優勢勝ち。決勝のエルラン・セリジャノフ(カザフスタン)には一本勝ちで締めくくった。

 阿部詩は決勝で昨年覇者の志々目愛(ししめ・あい=了徳寺学園職)に延長の末に一本勝ち。全5試合を一本勝ちと圧倒的な強さを見せた。女子52キロ級は日本勢が3大会連続で制した。

 志々目は準決勝で3大会連続3位のエリカ・ミランダ(ブラジル)に優勢勝ちしたが、決勝で力尽きた。

女子52キロ級決勝 志々目愛(下)に一本勝ちした阿部詩=バクーで(共同)

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◆オール一本 歓喜の詩

 「去年のお兄ちゃん(一二三)のように、世界が驚くような柔道を見せたい」。その言葉通り、5試合オール一本勝ちで鮮烈の世界選手権デビューを飾った。女子52キロ級の阿部詩は決勝で昨年女王の志々目を破り、とびっきりの笑顔を浮かべた。「今までやってきたことが出せた。うれしいけど、まだお兄ちゃんの試合があるので…」と、決勝を控える兄を思いやった。

 志々目との日本選手対決。互いに知り尽くしているだけになかなか技が決まらない。延長53秒。阿部詩の間合いになった。「来たと思った」。その瞬間を逃さない。この嗅覚は天性のものだ。内股を繰り出して一本勝ち。兄が目標としていた全試合一本勝ちを果たし、「自慢しちゃおう」と、笑った。

 憧れの兄から盗んだ技で勝ち上がった。初戦となる2回戦と3回戦は袖釣り込み腰で一本勝ち。「小さいころ、お兄ちゃんの決まった技を見て、練習で試して、自分風にアレンジした」。それが袖釣り込み腰だ。恥ずかしくて直接聞けなかった。じっくり見て研究した。一二三をほうふつとさせる豪快さだった。

 準決勝では相手の右腕を取るとクルリクルリと華麗に回り、腕がらみ。準々決勝も寝技で抑え込み。苦手としていた寝技で新境地をみせつけた。「進化した姿を見せられたと思う」。その表情には充実感が漂う。

 これまで外国選手に無敗。しかも底が知れない、今後の可能性を感じさせる勝ち方。東京五輪まであと2年。この18歳はどこまで強くなるのだろうか。 (バクー・森合正範)

<あべ・うた> 兵庫・夙川学院高1年時の17年2月に史上最年少の16歳で国際柔道連盟(IJF)主催の「ワールドツアー」を制覇。17年世界ジュニア選手権優勝。18年はグランドスラム・パリ大会制覇。世界ランキング5位。得意は袖釣り込み腰、内股。夙川学院高3年。158センチ。18歳。兵庫県出身。 (共同)

◆志々目涙「研究されていた」

 女子52キロ級の志々目は阿部詩の勢いに屈した。「研究されているとすごく分かった」

 得意の内股は外国勢には威力を発揮した。ミランダ(ブラジル)に優勢勝ちした準決勝は開始約30秒。左足をはね上げると前回銅メダリストの体が宙に浮いた。

 「目指しているのは五輪での優勝」。2連覇を逃し「課題が出た」と涙した。(共同)

男子66キロ級決勝 エルラン・セリジャノフ(左)を攻める阿部一二三=バクーで(共同)

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◆連覇一二三 無敵の舞

 控室で妹が頂点に立つ姿をじっと見つめていた。「次は自分がやる」。男子66キロ級の阿部一は覚悟を決めて決勝の畳に上がった。カザフスタン選手を強引なまでに何度も投げようと試みる。阿部一らしい野性味あふれる闘い。最後は詩が決勝で決めたのと同じ技、内股で華麗に投げきった。

 「2連覇できてホッとしている。自分の柔道をするだけだった」と淡々としたもの。ただ、「きょうだい世界一」に話が及ぶと、「なかなかできることではない。すごくうれしい」と頬を崩した。

 初出場となる昨年の世界選手権は6試合中5度の一本勝ち。豪快な投げ技は世界にインパクトを与えた。国際柔道連盟(IJF)のホームページでは阿部一が最も目立つ中央に置かれ、今大会の「顔」と言ってもいい。

 しかし、この1年は決して順風だったわけではない。7月のグランプリ(GP)大会では国際大会3年ぶりの黒星を喫した。精神的に「勝たないといけない」と守りに入り、持ち味の攻撃柔道ではなく「相手に合わせてしまった」。この敗戦で、本来の一本を取りにいく柔道に原点回帰。「あの負けがあったから、と言えるように」と、強い気持ちで今大会に臨んだ。

 世界選手権は通過点。「東京五輪で金メダル。それしか考えていない」。あと2年。心身ともにさらに磨き、その時を迎える。 (森合正範)

<あべ・ひふみ> 16、17年に全日本選抜体重別選手権2連覇。兵庫・神港学園高2年の14年に男子史上最年少の17歳2カ月で講道館杯全日本体重別選手権を制覇。世界ランキング2位。得意は背負い投げ。日体大3年。168センチ。21歳。兵庫県出身。 (共同)

 

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