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【科学】

脱たばこ社会へ 禁煙先進国タイの現状(上)

2009年9月15日

ショッキングな写真が印刷されたたばこのパッケージ

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 本人だけでなく周囲の人の健康も害する喫煙。禁煙や受動喫煙対策が始まっているが、進み具合はまだまだ。日本と同じ世界保健機関(WHO)が定めるFCTC(たばこ規制枠組み条約)批准国で、禁煙先進国のタイの現状を取材した。脱たばこ社会を目指す取り組みを二回にわたって紹介する。 (栃尾敏)

 「たばこは麻薬の一種で、喫煙は病気の一つ。死につながるが防御はできる。取り締まりが必要で、FCTCに批准したことはすべて実行する」

 バンコク市郊外にあるタイ保健省。疾病管理局たばこ規制室のシューリット・テントライソーン室長代理はたばこの管理・規制の必要性を話す。規制室はその中心機関で、活動強化のため、一カ月前にたばこ課から昇格したばかりだ。

■法整備

 タイは一九九〇年代から禁煙対策を進めてきた。たばこ製造管理法と非喫煙者健康保護法を九二年に制定して広告、販売促進活動、自動販売機での販売を禁止、たばこ製品の成分公表義務づけを実施。マスメディアでの広告もできなくなった。

 九八年からは、たばこのパッケージに「喫煙は肺がんの原因になる」「喫煙はあなたの周りの人に害を及ぼす」といった警告文言を記載。二〇〇二年から肺や喉頭(こうとう)がんなどのショッキングな写真も表示した。

 同年、冷房の効いた建物内での喫煙を禁止。罰金は喫煙者が約六千円、店は約六万円。その後も禁煙エリアは拡大、今では吸えるのは自分の家、指定された喫煙エリア、路上ぐらい。受動喫煙のリスクは少なくなった。

 喫煙者は法規制前の一九九一年に千二百二十五万人、喫煙率32%だったが、二〇〇七年には千八十五万人、21・22%に減った。

 たばこを製造・販売しているのは国営の専売公社。禁煙を呼び掛けながら、国がたばこを売るのはおかしいのでは? そう質問するとパヌワッ・パンケーッ室長は「法律を守らせ、規制するには民間でなく公社の方がやりやすい」と説明した。

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■連携

 タイで禁煙が成果を上げているのは、法律をつくる国、実働組織の禁煙NGO(非政府組織)、資金面で支える喫煙・健康対策財団を中心に社会システムとして禁煙プログラムが機能しているためだ。

 〇五年に発足した禁煙NGOの反たばこ医療従事者連盟には医師、歯科医師、看護師、薬剤師、マッサージ師など十七の医療機関が参加する。個別の啓発活動だけでなく連盟でセミナーや講演、禁煙マラソンを実施。電話による禁煙カウンセリングも行う。

 ソムシー・パオサワッ会長は「国王が禁煙の方針を打ち出していることが大きな支え。一つ一つ協力機関を増やしてきた。喫煙者は大きく減ってはいないが、未成年者の喫煙率は下がっている」と、活動の成果を話す。

 喫煙・健康対策財団のプラキッ・ワーティーサーテュキッ事務局長は、保健省でたばこ規制に取り組んだ経験がある禁煙対策の中心人物。禁煙にこだわるのは「呼吸器疾患などたばこで年間四万人死亡する。エイズや飲酒よりも多い」からだ。

■増税

 喫煙の抑制に最も効果的なのは増税で、「過去十六年間で十回増税した。今、たばこ税は85%で、価格は増税のたびに上がっている」。たばこ一箱は約百八十円。屋台ではその半分のお金でおなかいっぱい食べられる。

 プラキッ事務局長は八月中旬、東京に三日間滞在した。「日本のたばこは安い。たばこの自販機があり、パッケージもきれい」。若い女性の喫煙が多いののが気になったといい「害を警告するデザインにし、増税して値上げすればいい」とアドバイスした。

<記者のつぶやき> 空港を占拠したデモの印象がまだ消えないタイだが、禁煙政策は国民の強い反発もなくうまく進んでいるという。ただ、喫煙者を減らすのは容易ではない。公共空間から煙を締め出す受動喫煙対策に尽力しているようだ。

 

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