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【望 〜都の空から】

変容(4)築地市場 活気の名残 扇形

船が行き交う隅田川沿いに扇形に広がる築地市場=東京都中央区上空で、本社ヘリ「おおづる」から(久野功撮影)

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 築地市場の中にはかつて、「駅」があった。

 九州や北海道から、生きのいい魚を運んでくるのは、貨物列車の仕事だった。市場の建物が扇形にカーブしているのは、その名残だ。長い車両を敷地内に収めるための工夫だった。

 卸売業者の押方翼さん(65)は、ディーゼル機関車が走る風景を知る、数少ない現役の一人だ。到着はときどき遅れた。「そうすると大変で。荷降ろしを手伝わないといけないから」。競りまで時間がない。氷が敷き詰められた貨車から、手かぎで木箱をホームに引っ張り出す。汗だくになった。「なんせ、今とは量が違う」

 1935(昭和10)年の開場以来、続いてきたそんな光景も、トラック輸送が主流となった87年に消えた。今では、市場を通らない産直取引が増え、水産物の取扱量は30年前より2割減った。周辺もいつしか変わった。列車が経由していた汐留貨物駅跡は、高層ビルが立ち並ぶ。

 一方で、老朽化で移転が検討されてきた市場は予定地の土壌汚染が壁となったままだ。「取り残されている」。押方さんは言った。予定地は隅田川を越えた先にある。今は赤茶けた地の中心に、「市場前駅」と名付けられたゆりかもめの駅だけが、ぽつりと立っている。 (内田淳二)

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