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【望 〜都の空から】

薫風(4)善福寺川 椎の木抱く流れ

武蔵野の面影が残る善福寺川緑地と和田堀公園が新緑でつながり、蛇行する様子がくっきりと浮かび上がった=東京都杉並区上空で、本社ヘリ「あさづる」から(中西祥子撮影)

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 約6500本の樹木を有する善福寺川緑地の中でも、ひときわ威風を放つ1本の大木がある。樹齢200余年の椎(しい)の木。もともとは、緑地を横断する五日市街道脇にそびえていた。平成元(1989)年に道路の拡幅工事で伐採されるはずだったが、近隣住民による保存運動が実り、緑地に移植された。

 「善福寺川流域は、その独特の地形によって、自然から多くの恩恵を受けてきた。緑を大切にするという思いも強かった」。運動にかかわった杉並郷土史会の原田弘会長(83)はそう振り返る。

 善福寺川の「独特の地形」とは、蛇行だ。曲がりくねった流れは、氾濫(はんらん)も招きやすいが、周囲への浸水で肥沃(ひよく)な湿地、緑地ももたらす。その恵みによって、流域には縄文、弥生期から人々が居住してきた。近隣で発掘された松ノ木遺跡や大宮遺跡が当時の営みを今に伝えている。

 現在の緑地は昭和39年までに、流域の湿地を埋め立て、植林したものだ。人工で繁殖した緑は憩いの場となっているが、一方で近隣住民から「落ち葉や枝が迷惑だ」といった苦情も絶えない。

 保存された椎の木の前には「千年の後まで元気で繁殖するよう見守ってください」と記されている。言葉どおりの願いとともに、都会で自然を守ることの難しさも後世に伝える。 (稲熊均)

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