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【栃木】

進まぬ県内企業BCP策定 中小に遅れ 県・商議所後押し

中小企業庁がホームページで公表しているBCPの様式の一部

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 災害発生時などの事業の早期復旧策を定めた「BCP(事業継続計画)」の策定が、県内企業の間で課題となっている。帝国データバンク宇都宮支店が5月に行った調査によると、回答した県内企業の策定率は20%。全国平均を5%ほど上回る程度で、決して高いとは言えない。特に中小企業で低いとされており、県は民間と連携して策定支援に力を入れる。 (藤原哲也)

 まずは基本方針の確認から。「従業員の安全を守り、自社の経営を維持した上で、最終的に顧客の信用と従業員の雇用を守る」。次に人、物、情報などの被害を想定する。そして、あらゆる方面からの事前対策を練り、緊急時の責任者と体制を定めておく−。

 中小企業庁はホームページで、六ページの小冊子「簡易版BCP」を書き込む際の流れをこう分かりやすく説明。県が主催するセミナーでも活用されている。「中小企業では『何から手を付けていいか分からない』と悩む経営者が多いのが現状。基本的な考えやルールを教えている」と県の中小・小規模企業支援室の伊東和彦室長は話す。

 少人数でやりくりしている中小企業がこうした悩みを抱えているのは、帝国データバンクの調査結果からもうかがえる。結果によると、未策定の理由は「必要なスキル・ノウハウがない」が六割以上を占めてトップだった。「人材・時間・費用を確保できない」などの理由も多かった。

 全国的に中小企業の策定は大企業に比べて遅れる傾向にある。内閣府が昨年行った抽出調査によると、全国で大企業の六割が策定済みだったが、中堅企業は三割にとどまった。県内でも未策定企業の多くが中小企業と考えられる。

 県は県商工会議所連合会や大手損害保険会社などと協定を結び、一昨年から策定支援のプロジェクトを開始。損保の専門チームが個別企業を訪問して無料で策定を手伝うなどする。今年からは地区別ワークショップも始め、十月までに百二十四社が策定する実績を上げた。

 ただ、民間と連携した策定の支援は道半ばだ。伊東室長は「県内は東日本大震災の被災企業が多いため意識は高まっているが、六万社以上の企業が存在しており、未策定企業は多くある」と話した上で「地道に取り組みを続け、BCP策定のムーブメントを起こしたい」と意気込む。

 BCP(事業継続計画) 企業や自治体が大規模な災害やテロ攻撃などに遭った場合、被害を最小限にしつつ、核となる事業の継続と早期復旧に向けた手段や方法を事前に取り決めておく計画。「Business Continuity Plan」の略。東日本大震災で注目された。

BCP策定について振り返る君島社長=大田原市で

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◆6月に策定の大田原温泉ホテル 「龍城苑」君島美昭社長

 BCPの策定にあたり、企業経営者は何を感じたのか。県のセミナーに参加後、一年かけて六月に策定した大田原市の大田原温泉ホテル龍城苑(りゅうじょうえん)の君島美昭社長(57)に話を聞いた。

 −策定のきっかけは。

 東日本大震災や二〇一四年の大雪で営業を休止した経験などから、非常時の決めごとがないと困ると実感した。震災時は私が病気で入院中だった。私がいなくても指揮系統がきちんとしていれば安心できる。私たちはお客さまあっての仕事なので、一歩先のサービスができればと思った。

 −ポイントはどこか。

 まずはお客さまと従業員の安全が第一。連絡体制や食料の確保などあらゆる場合を想定してゼロベースで考えた。われわれは製造業と違って食料と人がいればある程度は対応できる。隣に日帰りの入浴施設もあるので、将来はホテル自体が災害復旧の拠点になることも想定している。

 −苦労した点は。

 アルバイトを含めて従業員は七十五人いるが、個人情報の問題で詳細な連絡体制の構築がまだできていない。スマートフォンのアプリを使おうとしても、スマートフォンを持っていない人もいる。手探り中だが最善の方法を考えたい。

 −会社へのメリットは。

 ある程度マニュアル化されたものがあれば、災害に直面しても動きやすい。従業員の意識も変わってより適切な対応ができる。お客さまの安全第一と被害拡大の回避ができれば会社の利益にもつながると思う。

 

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