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【栃木】

故郷に戻りおでん屋開業 足利の木村さん 市の担当者が移住を支援

「いろんな方に助けられて感謝している」と声をそろえる木村勲武さん(右)と妻の沙和さん=足利市で

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 足利市の旧市街地に新しい店の明かりがともって1カ月半。「もっくもっく」という名のおでん屋が若い客らでにぎわっている。店主は同市出身で東京からUターンしてきた木村勲武(いさむ)さん(36)。移住対策を進める市の支援を受けて店を構えた。滑り出し上々で「新しい人の流れをつくりたい」と意欲的に語る。 (吉岡潤)

 店があるのは、観光名所の足利学校や鑁阿(ばんな)寺などにほど近い「北仲通り」。一帯は、市内で繊維業が盛んだった大正から昭和にかけて、芸者が行き交う花街として栄えたが、繊維業の衰えとともに飲食店も減り、往時の活気はない。

 木村さんが開業したのは九月末。築八十年ほどの長屋の一角にある、十年以上閉まっていた空き店舗を借りた。「誰でも入りやすいように」と外からガラス戸越しに店内がよく見える造りに改装。また「観光客らの休憩場所になれば」と午後二時に店を開け、仕込みをしながら客に応じる。

 木村さんは高校卒業を機に足利を離れた。東京都内の大学を卒業後、不動産会社勤務を経て、海外を一年間放浪。「食べることは世界共通」と実感し、帰国後に都内の飲食店で働いた。「生産者、食材を知りたい」と茨城県石岡市の農家に住み込んで農業に没頭した経験もある。

 行く先で「出身はどこ」と尋ねられ、自分が知らない故郷の魅力、良さを教えてもらうことがあった。時折帰郷し、まちおこしに知恵を絞る人たちと交流を重ねるうちに「足利へ戻ろう」という思いが固まった。

 昨年三月、足利市が都内で開いた移住希望者らを対象にした集まりに参加。市で移住相談を担当する柏瀬誠さん(40)の案内で店舗用の物件を探した。頭にあったのは、高校時代に通ったコーヒー店。「古い建物でおばあちゃんが経営していて、あんな感じがいいなと」

 開店してみると客足は予想以上だった。「足利にこんなに人がいるのかと思った」と笑う。「この辺に初めて来た」と話す若い客が何人もいる。まだこれからだが、「きっかけなんだと思う。この店がうまくいけば、ここでもやっていけるんだと考える若い経営者がまた出てくるかも」。

 妻の沙和さん(34)は映画の宣伝会社に勤めていた経験を生かし、市の「映像のまち構想」を進める地域おこし協力隊員として活躍する傍ら、夜と週末、店に立つ。「地元の方や飲食店の先輩らにほんとに応援してもらって」と頭を下げる。七月から始めた店の改装には、古民家の利活用を進める活動に関わる市民有志が手弁当で協力してくれた。

 柏瀬さんは「人の流れが変わってきた。若い二人の店は、古い街を活性化させるシンボル的な存在」と表現。木村さんは言う。「足利っていいなと改めて思った。こんなにつながることができる人がいて」

 月曜定休。問い合わせは同店=電0284(82)9217=へ。

 

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