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【栃木】

ブドウ畑開墾60年 ワインに高い評価 足利の知的障害者支援施設ワイナリー

感謝の集いでブドウ畑を背に演奏する古沢さん=足利市で

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 足利市の知的障害者支援施設「こころみ学園」のブドウ畑が開墾から60年を迎えた。園生たちが育てたブドウは併設するワイン醸造場「ココ・ファーム・ワイナリー」で良質のワインとなり、高い評価を得ている。運営する社会福祉法人「こころみる会」理事長で、ワイナリー専務の池上知恵子さん(67)は「人間でいえば還暦。ほんとうに多くの方に支えられてきた」と深く感謝する。 (吉岡潤)

 ブドウ畑は平均斜度三八度という山の急斜面に広がる。

 一九五八年、池上さんの父で、当時市内の中学校で知的障害児学級の担任だった川田昇さん(二〇一〇年に八十九歳で逝去)が「子どもたちと作業学習ができる場を」と約三十人の生徒らと切り開いた。

 「平らな土地より訓練になるからいいと父は考えていた」と池上さんは振り返る。

 六九年、川田さんはブドウ畑のふもとに、こころみ学園を開く。八〇年、園生の自立を支援するために安定的な収入の確保を目指し、保護者らの出資を得てワイナリーを設立。醸造が許可された八四年、ワインづくりを始めた。

 「ココワイン」の評判は高まった。二〇〇〇年九州・沖縄サミットで晩さん会の乾杯に使われ、〇八年北海道洞爺湖サミットの総理夫人主催夕食会に登場した。

 航空機の国際線ファーストクラスの機内サービスにも採用された。毎年十一月、ブドウ畑で新酒を楽しむ収穫祭も盛況で、昨年は二日間で約一万四千人が訪れた。

 ワイナリーでは年間約二十万本を生産。園生はブドウ畑の世話に加え、醸造場でワインの仕込みや瓶詰めなどに精を出す。ブドウの売買代金と醸造場の業務委託料を学園がワイナリーから受け取る仕組みになっている。

 課題は約百四十人いる園生の高齢化。最高は九十五歳で平均五十七歳、車イス利用者も多い。急斜面での作業が難しい園生のために平地の畑を増やしている。

 昨年三月、川田さんの中学教員時代の教え子で、学園職員として働いた宮沢邦夫さんが七十三歳で永眠した。息を引き取る前日、車イスで学園を訪れ、ブドウ畑の水路について話していったという。池上さんは月日の流れを痛感した。

 「開墾したみんなはどんな気持ちだったんだろう、便利な方へ流れていく今の時代は幸せなのかなって」

 そして語る。「六十年といっても、ワインづくりでは、まだひよっこ。ずっと見守っていただいている地元の方やみなさんに感謝し、これからもどうぞよろしくという気持ちです」

 学園とワイナリーは今月二日、「感謝の集い」を開いた。園生と保護者、支援者、ココワインファンなど約二百六十人が出席した。

 ブドウ畑に面した会場で開墾当時などの映像が披露され、ワイナリーの役員を務めるバイオリニスト古沢巌さんの演奏が響いた。飾らず、それでいて温かい会で、参加者はホットワインにほおを染めた。

 

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