東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 栃木 > 記事一覧 > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【栃木】

「小石」から見た正造を絵本に 優しさと強さ「遺品」通し描く

絵本を紹介する越川さん(右)とやまなかさん=宇都宮市で

写真

 足尾鉱毒事件と闘った佐野市出身の政治家・田中正造(一八四一〜一九一三年)の生涯を、田中に拾われた小石の視点から描いた絵本『わたしは石のかけら−もうひとつの田中正造物語』が完成した。鉱毒に苦しむ人々を守ろうとした生きざまをユニークに表現。最期まで小石を大事にしていたというエピソードを通して、田中の温かさや精神的な強さを伝えている。 (藤原哲也)

 「わたしはかけら。石のかけら。いつも ふまれ けられていた」

 物語はこの一文で始まる。河原に転がっていた「主人公」の小石は、やがて鉱毒などの影響で居場所をなくすも、田中に拾われたことで大事に守られ、温かな心に包まれながら、田中の生涯を最後まで見届ける。

 出版元の随想舎(宇都宮市)によると、田中は気に入った小石をよく拾い、亡くなった際も遺品の入った袋の中に三個の小石が入っていた。それらは佐野市郷土博物館に展示されている。地元では田中からもらった小石を家宝にして保管する家庭もあるという。

 絵本化は田中に関連した著作がある元小中学校教諭の越川栄子さん(83)=宇都宮市=が随想舎に送った詩がきっかけ。詩が編集者の目に留まり、越川さんが絵本のために文章を練り直した。絵は宇都宮市出身の作家、故立松和平さんの長女でイラストレーターのやまなかももこさん(40)が担当した。

 各場面には立松さんの長男で作家の横松心平さん(45)の解説文も載せている。川などの鉱毒被害地を調べて歩き、問題解決に生涯をささげた田中。横松さんは巻末で、小石を「正造の河川調査の証し」「富を蓄えずに、すべてを人に与え続けた生き方」を表すものとつづった。

 越川さんは「郷土史を教える中で、田中を栃木の誇りとして知ってほしい思いがあった。若い人に絵を描いてもらいありがたい」と感謝。父が田中に関係する著作を残しているやまなかさんは「田中のイメージを崩さず、力強さや優しさを絵に込めた。絵本に携われた縁を感じる」と語った。

 絵本は県内の主な書店で販売している。B5横変形二十四ページ。税別千円。問い合わせは、随想舎=電028(616)6605=へ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報