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【栃木】

御料牧場の四季 皇室の農を探る (上)元旦御膳のゴボウ

「晴の御膳」に臨まれる天皇陛下。箸を立てる所作をされるが、実際に召し上がることはない=2004年1月1日、皇居で 宮内庁提供

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 宮中晩さん会などで供される料理の食材を生産する宮内庁御料牧場(高根沢町、芳賀町)では、一般家庭でも並ぶ野菜類が、特別な思いを込め育てられている。一部は天皇、皇后両陛下が新年を祝う御膳の材料になる。牧場の季節をたどる企画で、今回は宮中祝賀行事に向けた牧場の営みを紹介する。 (蒲敏哉、高橋淳)

 霜の降りた土の畝を、一列に並び、手作業で細いゴボウを引き抜く人たち。広大な農場での作業は、一見、乱雑に行われているように見えるが、その指先は、繊細なものを扱うように動いている。

 十二月に収穫される、このゴボウは、牧場で「細ごぼう」と呼ばれ、天皇、皇后両陛下が元旦に召し上がる、祝いの膳の一つ「菱葩(ひしはなびら)」に用いられる。

 二〇一八年元日の未明、天皇陛下は皇居で五穀豊穣(ごこくほうじょう)、国家安寧(こっかあんねい)、国民の幸せを祈る、四方拝(しほうはい)などの拝礼をされた後、「晴の御膳」と呼ばれる儀式に臨んだ。陛下は、えんび服に勲章の正装で座り、お膳に箸を立てる所作だけを行い、実際に召し上がることはない。

新年に天皇、皇后両陛下が最初に召し上がる「菱葩」=宮内庁提供

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 天皇、皇后両陛下が、晴の御膳の前に、実際に新年御祝料理として最初に口にするのが菱葩だ。

 宮内庁大膳課によると、菱葩はまず、ゴボウをゆで、水に晒(さら)し、蒸す、蜜に漬けることを繰り返す。その後、甘い白みそをまぶし、小豆で色付けしたひし餅と直径約十五センチの薄く丸い餅で包む。これを美濃紙に包んで供される。

 菱葩に用いられるゴボウは長さ約三十センチで収穫され、直径は八ミリ、長さ十三センチの規格が求められる。

 菱葩の歴史は平安時代までさかのぼるともされる。江戸初期に後水尾(ごみずのお)天皇が記した「後水尾院当時年中行事」には、四方拝から天皇がお戻りになり、「あした(朝の意味)の物参る ひしはなひら、梅干、茶なとまいりて」の記述がある。

 牧場では昨年八月末、約十アールの畑に種をまき、昨年十二月四日、職員総掛かりで収穫作業を行った。

職員らが総出で収穫する細ごぼう=2017年12月4日、高根沢町の宮内庁御料牧場で(圷真一撮影)

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 そ菜(さい)係長塩田光一さん(56)は「直径八ミリの規格に合わせるため、根の直径を測りながら日々成長を見守ってきた」と明かす。

 約二万粒の種をまいた中から、規格にあった約三千本を宮内庁に出荷した。

 菱葩は、宮中の新年祝賀の儀で、閣僚はじめ、各国大使が出席する「お祝酒(しゅくしゅ)」の場でも供される。

 健康長寿を願い、千年以上続いてきた皇室の伝統は平成を超えて引き継がれる。

<御料牧場> 1875(明治8)年、旧内務省が千葉県内に設けた「下総牧羊場及び取香(とっこう)種畜場」が始まり。成田国際空港の建設に伴い、1969年に高根沢町と芳賀町にまたがる現在の場所に移転した。標高145メートルにあり、面積は約252ヘクタールと東京ドーム54個分の広さ。広大な牧草地の中に乳牛舎、豚舎、羊舎などが点在する。皇室の静養のほか、在日外交団の接遇の場としても活用されている。

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