東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 栃木 > 記事一覧 > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【栃木】

足利出身・想田監督 最新作2本 17日上映

最新作への思いを語る想田監督=足利市で

写真

 ドキュメンタリー映画の作り手として国内外で高く評価されている足利市出身の想田和弘監督(47)の最新作二本が十七日、同市の「ユナイテッド・シネマ アシコタウンあしかが」で上映される。想田監督は「作り手はピッチャー、観客はバッター。投げる球を打ってほしい」と語る。 (吉岡潤)

 想田監督は「観察映画」と呼ぶ独自の手法を貫く。「被写体や題材に関するリサーチは行わない」「台本は書かない」「ナレーション、説明テロップ、音楽を原則として使わない」など「十戒」を守り、撮影から編集まで自ら行う。

 かつてテレビのドキュメンタリー番組を何本も手掛けた。「事前にリサーチし、台本を固めて取材に行く。すると、台本と違う現実は見ないふりをする」。消せない違和感。「まっさらな状態で、行き当たりばったり撮影した方が面白くなるんじゃないかと」

 編集で説明を加えないのも「観客によく見て、よく聞いてほしい」からだ。「かみ砕いてスプーンで口まで運ぶ『離乳食映像』は作らない。僕が思ってもみなかった観点で見る人がいて、いろんな解釈をしてくれるのがうれしい」

 今回、上映する「港町」は瀬戸内海に面する岡山県の小さな港町で暮らす人々を追う。「高齢化」「過疎化」「漁業の衰退」といった問題が見え隠れするが、それらのテーマとは別に、妙に不思議な後味が残る。

 カラー映像を編集でモノクロに変えた。「いつ、どこの話か、分からなくなって、夢の中にいるみたいになった。虚構性が加わり、分からないものは分からないまま置いておくという、近代以前の社会、人間関係が描けたような気がする」

 もう一本の「ザ・ビッグハウス」は、米国の名門ミシガン大アメリカンフットボールチームが本拠地とする巨大なスタジアムにカメラを向けた。初めて米国社会を題材にした。

 いつもは一人で撮影するが、同大の学生や教員ら計十七人でカメラを回した。「試合以外の全て」を合言葉に各自が「面白いと思ったものをてんでばらばら」に撮った映像をつないだ。

 観客や物売り、厨房(ちゅうぼう)、布教活動、大量のごみ、巨額の寄付…。そこから透ける貧富の差、階級、人種、ナショナリズム、軍隊との距離。撮影時期が大統領選挙戦の最中で、トランプ支持を求める車がスタジアムのそばを走るが、観客は試合に夢中だ。「米国の転換期を凝縮して撮れたのではないか」と自ら評する。

 「ドキュメンタリーというと、肩苦しいイメージがあるが、僕はあくまで『映画』として撮っている。作り手の体験を疑似体験し、単純に楽しんでほしい」

 チケットなどの問い合わせは、足利市映像のまち推進課=電0284(20)2260=へ。

<そうだ・かずひろ> 1970年、足利市生まれ。足利高から東大文学部へ。93年からニューヨークに住む。2016〜17年、ミシガン大招聘(しょうへい)教授。「観察映画」と呼ぶドキュメンタリー作品の発表を重ね、国内外の映画祭で数々受賞している。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】