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【栃木】

<11日に考えた>正造の教え原点 環境守る 佐野のNPO理事長 上岡さん

新エネルギー財団会長賞の盾や賞状を持つエコロジーオンライン理事長の上岡裕さん(右)と同事務局長の大和田正勝さん=佐野市で

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 佐野市のNPO法人「エコロジーオンライン」(EOL)は「持続可能な社会」を目指し、自然エネルギーの普及啓発や環境を守る活動に取り組む。理事長の上岡裕(かみおかゆかた)さん(58)を突き動かす原点は、郷土が誇る政治家の田中正造(一八四一〜一九一三年)の教えにある。「正造が言い残したことはやらなければいけない」と迷いなく語る。(吉岡潤)

 「真の文明ハ 山を荒(あら)さず 川を荒さず 村を破らず 人を殺さゞるべし」。日本で最初の公害とも言われる足尾銅山鉱毒事件の解決に奔走した正造の有名な言葉だ。佐野市で育った上岡さんは学校で教師が正造について話すのを聞き、生き方をごく自然に学んだ。

 大学を卒業し、音楽関連事業を手掛ける会社に入った。八年間勤め、フリーライターに転身。二〇〇〇年、インターネットを活用して地球温暖化防止や再生可能エネルギーの情報を発信するEOLを設立した。

 「普通の人に普通に考えてほしい」が基本方針。多くの人の耳に届くように発信の仕方を工夫してきた。

 自然エネルギーに関心が強い坂本龍一さんらミュージシャンと協力してコンサートを開いたり、風力発電の啓発のために「風」にちなんだ名曲を集めたCDを作ったり。太陽光パネルと蓄電池を搭載し、屋外ステージとして使えるトラックを各地のイベントに派遣。一六年の熊本地震では支援物資を被災地に運び、歌手の八代亜紀さんがトラックのステージに立った。

 東京都や省庁などと連携した事業では、デザイナーや女子美術大の学生に考案してもらった個性的なキャラクターを活用。〇八年には、企業の寄付を基に全国の幼稚園や保育園に太陽光発電設備を贈るプロジェクトを始め、贈呈先は現在までに六十カ所を超える。絵本も作った。今年二月、独特な普及啓発活動を評価され、新エネルギー財団の財団会長賞を受けた。

 長く活動する中で、新たな課題も出てきた。大規模太陽光発電施設の設置で生じる自然や景観の破壊、将来的な太陽光パネルの大量廃棄。「地域にとって大切な資源は何か。自然と共生し、エネルギーを循環的に生み出すにはどうするか。自然エネルギーの必要性、使い方を伝えなければ」

 アフリカ大陸東の島国マダガスカルでの支援事業にも乗り出した。現地では燃料として薪や炭が大量に使われ、森林破壊が進んでいる。伐採を抑えるため、おがくずやもみがらを加工して燃料にしたり、家畜のふん尿をバイオガスに変えたりする技術などを住民が学べる場を構想している。

 「日本は公害やさまざまなエネルギー問題を経験した。経験を途上国と共有し、持続可能な社会がどうあるべきかを考えるのもわれわれの仕事だと思う」

 田中正造が説いた「真の文明」は、国連が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)に重なる。上岡さんは「だからやらなければいけない」と笑った。

 

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