東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 栃木 > 記事一覧 > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【栃木】

<御料牧場の四季 皇室の農を探る> (上)外交団接待

各国の大使館関係者に披露された古式馬術「母衣引」。馬は独特の歩みを見せる=高根沢町の御料牧場で

写真

 新緑の季節を迎える宮内庁御料牧場(高根沢町・芳賀町)では、各国の大使や大使館員らを招く「外交団接待」が開かれる。古式馬術「母衣引(ほろひき)」が披露され、牧場産の羊肉を使ったジンギスカン料理も午さん(昼食)で振る舞われた。日ごろは静かな牧場は一気に華やぐ。牧場の春から初夏の営みを紹介する。

 「ハイヨッー」。大きな声を掛け合いながら、二頭の馬を走らせる。騎手は吹き流しに似た長さ約十メートルの母衣(ほろ)を背負う。馬の勢いが増すと、春を象徴する緑と白に染められた母衣と秋を象徴する赤と白の母衣が水平にたなびく。

 二頭のうち「光桜(みつざくら)」は去勢された八歳の牡馬(おすうま)で、宮内庁主馬班の武田清志さん(47)が騎乗する。九歳の牝馬(めすうま)「生藤(いくふじ)」は倉賀野(くらがの)克宏さん(45)が操る。

 母衣は戦場で矢を防ぐ道具などとして用いられたとされる。江戸時代からは様式美を伝える馬術で、母衣が引かれるようになったという。

 三段階で速度を上げ、騎手が後方に母衣を伸ばしていく。水平にたなびかせるには馬の上下動を少なくする必要があるため、馬は右前脚と右後脚、左前脚と左後脚を同時に前に出す「側対歩(そくたいほ)」と呼ばれる特殊な方法で走らせる。この走法に適したトロッター種という馬に調教を積んで古式馬術を披露する。

 倉賀野さんは「二人の呼吸を合わせ、速度を同じにして母衣をきれいに見せることに細心の注意を払う」と説明する。

 外交団接待は千葉県成田市の下総御料牧場時代から続く恒例の行事で、毎年五月に二日間開催される。今年はオーストリア、ナミビア、インドネシアなど六十八カ国百六十二人の大使らが参加した。

 参加者は馬車や自転車で新緑にあふれた牧場内を巡り、乗馬も楽しむ。午さんはジンギスカンを中心に、焼き鳥やボンレスハムといった牧場で生産される食材を使った料理が振る舞われた。

 天皇陛下は皇太子時代の一九七一年、美智子さまとアフガニスタンのバーミヤン遺跡を訪問した。「満月の夜で、国王が街の明かりをすべて消すよう命じられ、お二人は月明かりの石仏像を楽しまれた」と自国の文化に触れた両陛下の逸話を明かすバシール・モハバット大使(61)。牧場で日本の伝統と自然を満喫し、「こうした行事は、国や市民同士の絆をますます強くする機会になっている」と語った。 (この連載は小川直人、原田拓哉、蒲敏哉、高橋淳が担当します)

<御料牧場> 1875(明治8)年、旧内務省が千葉県内に設けた「下総牧羊場及び取香(とっこう)種畜場」が始まり。成田国際空港の建設に伴い、1969年に高根沢町と芳賀町にまたがる現在の場所に移転した。標高145メートルにあり、面積は約252ヘクタール、東京ドーム54個分の広さ。広大な牧草地の中に乳牛舎、豚舎、羊舎などが点在する。天皇皇后両陛下、皇太子ご一家、秋篠宮ご一家の静養の場としても活用されている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報