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【栃木】

<奥島孝康のさらに向こうへ>スカウトジャンボリー 自己犠牲の精神を再確認

 炎天下の続く八月四日から十日まで一週間、石川県珠洲(すず)市で約一万三千四百人のスカウトによる第十七回日本スカウトジャンボリーをボーイスカウト日本連盟理事長として主催した。アメリカやイギリスなど、世界十二の国と地域から約六百人のスカウトも参加した。

 四年に一回のジャンボリーではあるが、今年は例年の半分の規模に縮小した。というのも、三年前には約三万四千人に及ぶ第二十三回世界スカウトジャンボリーを山口県きらら浜で盛大に行った。そのさらに二年前にはプレ世界ジャンボリーを行うなど、大規模なジャンボリーが続いた。二年後の東京のオリンピック奉仕などを考慮すると、規模の縮小もやむをえないことであった。

 とはいえ、ジャンボリーは、スカウトの行う大規模な集会ないし大会であって、日頃の訓練の成果を競う、いわば競技大会の観のあるゲーム大会のようなものである。

 楽しくなければスカウティングではないといわれるように、スカウト活動はゲームを楽しみながら、チームプレーやフェアプレーを通じて公共心を養い、究極の目標であるベターワールドを創るために社会に貢献することを目指すものである。四年後の二〇二二年は、日本連盟結成百周年に当たる年でもあり、それだけに今年は仕上げの年として重要である。

 すなわち、わが日本連盟も、さまざまな問題を抱え、幾多の課題に直面しているが、スカウト訓練の基本、ウッドクラフト(森林生活法)とパトローリング(班制教育法)を軸に、再建に取り組む年である。スカウト数は、世界で三千万人を数えるというのに、日本は十万人にすぎない。少子化や受験競争が理由とされているが、健全なハートとたくましい身体をもつ青少年が多数いなければ日本の未来はない。

 今回のジャンボリーは全国的には好天ではなかったが、珠洲は連日の猛暑で、多数の熱中症患者が出た。しかし、全体としてみれば、プログラムは順調に進み、スカウトたちはその青春を爆発させる素晴らしい大会となった。

 能登半島の先端にある珠洲市という風光明媚(めいび)なジャンボリー開催地は、猛烈な暑さだったとはいえ、夜間に小雨が一、二回降ったくらいで、猛暑にもかかわらず、樹陰では心地よい涼風が吹き、実に気持ちのいいキャンプであった。参加者たちはかなり満足したことであろう。

 スカウトたちの行うゲームは、大半がチームゲームである。スカウトはジャンケンひとつでも、集団で行う。一般にチーム対抗のゲームでは、チームの中の一人二人が犠牲になる必要がある場合が少なくない。それが集団ゲームのよいところである。社会というものはそうした仕組みになっている。だからこそ、社会を支える自己犠牲の精神をもつ人々が必要なのだ。

 ところがさらに言えば、自己犠牲とはいうものの、社会の構成員である以上、その者は社会のどこかで誰かに世話になっている。本当のところは「人も知らず自身も知らずに受ける恩」(新渡戸稲造)に対する感謝の表れこそが自己犠牲といわれるものの実体ではないか。

 そうだとすれば、自己犠牲あるいはフェアプレーの精神とは、市民としての当然の行動様式にすぎないと考えるのが、スカウト流の思考論理であり、その志を再確認するのがジャンボリーなのだ。

<おくしま・たかやす> 愛媛県日吉村(現鬼北町)生まれ。早稲田大第一法学部卒。同大第14代総長。同大ラグビー部長、探検部長、日本私立大学連盟会長、日本高校野球連盟(高野連)会長などを歴任。ボーイスカウト日本連盟理事長、2013年から白鴎大学長。79歳。

 

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