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【東京】

一人だけの出版社 千住の魅力を発信 育休後に独立の吉満明子さん

カフェ兼事務所で、「ゆめのはいたつにん」を手にする「センジュ出版」の吉満明子さん=足立区で

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 足立区千住の一角に、たった一人の出版社が誕生した。その名も「センジュ出版」。大手出版社に勤務していた吉満明子さん(40)が育児休暇中に地元の魅力を再発見、独立する道を選んだ。出版だけでなく、カフェやイベントも手掛け、千住の魅力をまるごと発信している。 (佐藤大)

 吉満さんは学生時代に千住を訪れ、老若男女問わず活気あふれる雰囲気に「いつかここに住みたい」と思った。念願かなって十年ほど前に住み始めたが、出版社の仕事は朝から晩まで忙しかった。タレントや一部上場企業創業者の自伝、焼酎ガイドなど多種多様な本を手掛け、仕事が面白くてたまらなかった。地元のことを深く知る機会はないまま時は流れた。

 転機は、二〇一二年の長男出産。大きなおなかで初めて昼間に地元の商店街を歩いてみると、見るものすべてが新鮮に見えた。昔ながらの八百屋さんに、若い人向けのカフェやアトリエが混在する。「そこには、顔と顔が分かる関係があった」。独自に地元の店などを取材し、ウェブマガジンなどで魅力を伝えた。

 育休を終え、一四年春に職場復帰したものの、地元に根を下ろして発信を続けたい気持ちは強まった。一年後に退社し、昨年九月にセンジュ出版を設立。自宅近くの古いアパートを改装し、カフェ兼事務所に。自分の好きな本や地元の人などが提供してくれた本を並べた。ちゃぶ台を置いたカフェは早くも地元の人たちの交流の場になっている。

 独立後初めて、今年二月に手掛けた本は「ゆめのはいたつにん」。カンボジア農村部の小学校を回り、移動映画館の活動をしているNPO法人代表教来石(きょうらいせき)小織さんを取り上げた。「ひとり出版社」だから十分な宣伝もできないが、SNSなどで評判は広がり、重版が決まった。

 四月には、教来石さんらの出版記念トークライブと手作りパンや野菜の販売を組み合わせた「まちマルシェ」を地元の長円寺(千住四)で企画した。「何でもネットで分かったような気になりがちな時代ですけど、人間は実は本能的に触れ合うことを求めているのではないでしょうか。本やコーヒー、イベントを通じて人と人とをつなげたい」。かつての「モーレツ時代」とは違う時間の流れを楽しんでいる。

 

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