東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 東京 > 記事一覧 > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【東京】

<東京NEWS2016> (4)屋外展示物火災で男児死亡

イベント会場外に設けられた献花台に花を手向ける女性=11月7日、新宿区で

写真

◆規則の狭間で起きた事故

 秋らしい穏やかな日曜日だった十一月六日、明治神宮外苑で開かれていた芸術イベント「東京デザインウィーク」の会場で突然、展示物の一つが出火。中で遊んでいた男児=当時(5つ)=が亡くなった。

 なぜこんな場所で火災が起きたのか。取材すると複数の要因が浮かんだ。まず、出火した日本工業大(埼玉県宮代町)の学生グループの作品は、素材も構造も非常に燃えやすかった。木枠を積み重ねたジャングルジムの形で、中に大量のかんなくずのような木くずが飾り付けてあった。短時間で一気に燃え広がった。

 焼け跡からは白熱電球の投光器が見つかった。この熱で木くずが発火したとみられる。投光器は本来、夜間の設営作業などで使うためのものだった。会場には学生が交代で立ち会っていたが、白熱電球の危険性を十分理解していなかった恐れがある。

 また、法令や安全基準の狭間(はざま)で起きた側面もある。消防法は主に建築物、都火災予防条例はガスバーナーなどの火気を使う屋外イベントが対象。今回のような屋外展示物はいずれも当てはまらず、消火器の設置や点検の義務はない。公園などの常設遊具には国土交通省や業界団体の安全基準があるが、中に入って遊んだり鑑賞したりする体験型アートにはない。

 主催者が作品の安全性をどう把握していたのかという疑問も浮かぶ。主催者によると、日本工業大が事前に提出した書類は、八月末の「コンセプトシート」のみ。そこには「イソギンチャクと(魚の)クマノミのような共生関係を表現する」という趣旨の文章や挿絵はあったものの、木材や木くずという素材や、ジャングルジム形という構造などの記載はなかったという。

 主催者が具体的な展示内容を知ったのは、開幕直前の会場内の巡回。投光器の存在や位置に気付いたかどうかは不明だ。

 警視庁が業務上過失致死傷の疑いで捜査を進める一方、同様の火災を防ごうとする動きも出ている。東京消防庁は火災後、屋外イベントの電気設備のチェックを強化。製品評価技術基盤機構(NITE)も、照明器具が原因の火災が過去五年間で四十九件もあったと発表した。このような悲劇を絶対に繰り返さない努力が、小さな子どもの命を奪ってしまったことに対する社会の責任だろう。

 会場近くに主催者が設置した献花台には、数十の花束が供えられていた。「天国で遊んでネ」と書き添えたミニカーや菓子、飲み物−。ある男性は「うちにも同じぐらいの年の子がいるので、何かしてあげたくて」と手を合わせた。献花台は火災から一カ月後の今月五日に撤去されたが、今も花を手向ける人がいる。

 男児の両親は十七日の「お別れ会」で、「深い暗闇の中にいるような気持ち」とコメントした。わが事のように胸を痛め、花を供え、男児の冥福を祈る多くの人々の思いが、少しでも両親の安らぎと再発防止の動きにつながってほしい。 (谷岡聖史)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報