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【東京】

震災で帰郷した男を包み込む深川人情 写真家大西さん、故郷舞台に初メガホン

撮影現場でカメラをのぞき込む監督の大西みつぐさん(「小名木川物語」製作委員会提供)

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 江戸時代からの水路が、今も網の目のように流れる深川(江東区)に息づく人情をテーマにした映画「小名木川物語」が完成した。深川で生まれ育った写真家大西みつぐさん(64)の初監督作品。「川のまち」で生きる町工場や商店主らの姿を四季折々の情景と共に描いている。 (浅田晃弘)

 両面テープを製造している町工場に生まれた主人公の進(すすむ)が、十年ぶりに実家に帰ってきた。働いていた福島県の工場が東日本大震災後に営業不振となり、退職へと追い込まれた。故郷には悲しい記憶があり、喪失感を抱えて町をさまようなか、終戦後の江東区で俳人石田波郷が詠んだ「焦土俳句」と出合う…。

 映画は、主人公が住民との交流を心の支えに、一度は捨てた故郷への愛情を取り戻していくストーリー。3・11後の自分を、戦後の焼け野原から復興を果たした深川に重ね合わせている。製作委員会広報の東海明子さん(49)は「深川には今も温かいコミュニティーが残る。行き場をなくした人が、また戻って来られる場所として描いた」と話す。

 フィクションにドキュメンタリーの要素を交えた。深川の工場や商店で働いている人が「本人役」として多数出演し、町で生きる人たちの姿を伝える。主人公の実家の場面は本物の両面テープ工場で撮影し、工場主が父親役を演じた。大横川で小舟に乗って花見を楽しむ「お江戸深川さくら祭り」や小名木川の「灯籠流し」など、季節ごとに移ろう川の風景も登場する。

 旧中川と隅田川を一直線でつなぐ小名木川は、徳川家康が幕府を開く前に新しい都市の物流ルートとして掘った。町のシンボルとしてタイトルにした。東京の下町などの写真で知られる大西さんは「震災以降、町を愛し、人を愛するという普通のことが日本を支えている。そこから再生する以外に道はない。(映画では)普通の町の風景と、いとおしい人々を丹念に描いた」とコメントしている。

 二十五日に深川江戸資料館(同区白河)で開かれる第一回上映会はチケットが完売。第二回は四月九日午後七時から古石場文化センター(同区古石場)で開催予定で、来月十日からチケットを販売する。詳細は「小名木川物語」公式サイトで。

 

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