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【東京】

<脱 子どもの貧困>(上)「海水浴」の機会も調べよ 首都大学東京・阿部彩教授

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 子どもが、楽しい時間を過ごすはずの夏休み。近年は貧困問題が影を落とす。厚生労働省によると、二〇一五年時点の「子どもの貧困率」は13・9%で、過去最悪だった前回調査(一二年)より2・4ポイント改善したが、国際的にはなお高い水準だ。解決に向け、どのような取り組みが必要か、識者に聞いた。一回目は首都大学東京の阿部彩教授。親の所得だけでなく、「海水浴」などの指標を設け、子どもが経験する機会が奪われていないかにも目を凝らすべきと説く。

 「子どもの貧困率」が2・4ポイント減少したことは大きい。ただ改善は国の貧困対策の影響というよりも、景気が良くなり親の所得が回復したからだ。経済状況が再び悪くなれば、貧困率も悪化する可能性があり、景気に左右されない支援が求められている。

 特に、ひとり親家庭の貧困率は50%を超える状況で、そこに手を打つためには現金支給が欠かせない。政府は昨年、ひとり親家庭に支給する児童扶養手当を引き上げた。だが、対象は二人目以降に限られ、それほどのインパクトはない。

 厚労省の調査は、所得を基に貧困率を推計しているが、欧州では、子どもの具体的な生活状況を把握できる「剥奪指標」を使った調査を取り入れている。「海水浴に行く」「学習塾に通わせる」といった項目を聞き、子どもが経験する機会が奪われていないかを調べるものだ。

 全員が海水浴に行くべきだということではない。一般的な家庭で、少しでも金銭に余裕があれば子どもにしていることができないのは、家計の危機的状況を意味している。子どもの生活がどれほど脅かされているかがストレートに反映される。

 近年、民間団体による子ども食堂や学習支援がメディアで注目されている。重要な活動だが、そもそも公的機関が担うべきこと。週に一回、月に一回という支援よりも、全中学校で給食を始めるなど、継続的で漏れのない取り組みが先決だ。

 なぜ、ご飯を食べられない子どもがいるのか。なぜ、母親とご飯を食べられない状況なのか。子どもたちがそうならないようにするために、社会はどうするべきかという議論に至っていない。労働環境や学校での取り組みなど、社会の仕組みを変えなければ、根本的な解決にならない。

◆都の実態調査 食の困窮は中2で11%

 都は2月、阿部教授の研究室と連携して初めて実施した子どもの生活実態調査の結果を発表。「生活困難層」が2割以上に上った。

 4市区(墨田区、豊島区、調布市、日野市)の小学5年、中学2年、16〜17歳の子どもとその保護者を対象に実施。保護者と子どもそれぞれ約8000人から回答を得た。

 「生活困難層」は(1)所得が一定基準以下(2)家計の逼迫(ひっぱく)(「電気料金」「家賃」「食料」など7項目で支払えなかった経験が一つ以上)(3)子どもの体験や所有物の欠如(「海水浴」「クリスマスプレゼント」など15項目から三つ以上該当)−の三つの要素のうち一つ以上該当している家庭と定義。小5で20.5%、中2で21.6%、16〜17歳で24%に上った。

 中2でみると、食べ物に困窮した経験があるのは11.2%、経済的な理由で過去1年間、海水浴に行けなかったのは4.0%だった。

<あべ・あや> 米・タフツ大大学院で博士号取得。国際連合などを経て、現職。研究テーマは、貧困、社会保障など

<子どもの貧困率> 平均的な可処分所得(手取り収入)の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合。厚生労働省によると、2015年時点は13・9%で、7人に1人の割合になる。過去最悪だったのは12年の16・3%。経済協力開発機構(OECD)の直近のデータでは、加盟国など36カ国の平均は13・3%で、日本はこれを上回っている。

 

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