東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 東京 > 記事一覧 > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【東京】

すし店主が郷土史エッセー 新宿「早稲田八幡鮨」4代目・安井弘さん

「早稲田わが町」を刊行した安井弘さん=新宿区で

写真

 かっぱ巻きの考案者として知られる新宿区のすし店「早稲田八幡鮨(やはたずし)」4代目安井弘さん(83)が、足で調べた郷土史エッセー「早稲田わが町」を刊行した。かつて戸塚と言われた、同区西早稲田と高田馬場の人々の暮らしが伝わってくる。 (中村信也)

 八幡鮨は約百年、菓子店の時代からは創業百五十年の歴史がある。安井さんは十八歳から握り始めた。

 職人が卵を焼いていた時に関東大震災が起きたという母の話。小学校に入学した年が「皇紀二千六百年」(一九四〇年)で、お祝いの歌がラジオから盛んに流れた体験。抜群の記憶力で大正・昭和がつづられる。

 文章を書くようになったのは、母校の戸塚第一小学校の創立百年の七六年、同級生らと古老から聞き取った「戸塚」の歴史をまとめて本にした時から。

 「手紙を書くのも苦手だったんですが、本を出したら新聞にほめてもらって道が開けた」と目を細める。

 以来、続編を出すつもりで、仕事の合間にお年寄りを訪ねてはメモをした。

 「いつの間にか話を聞いたお年寄りの年齢になり、メモを世に出さなければ申し訳ない」と一念発起したのが今回の本だ。

 戦時下の食料統制で、すしのシャリに乾燥芋を混ぜるよう当局の指導があったことなど、すし店から見えた現代史も見えてくる。

 安井さんによると、かっぱ巻きは物資のない昭和二十年代に生まれた。「もろきゅうを載せたらシャリとなじまなかったけど、巻いてみたらノリとよく合って評判になった」と話す。

 本書はデビュー作だが、日本初の本格的な私立の洋式病院とされる「蘭疇舎(らんちゅうしゃ)」があった歴史も掘り下げた本格派。名刺には本業と並び「郷土研究家」とある。

 書籍工房早山刊、二百十二ページ。千九百四十四円。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報



ピックアップ
Recommended by