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【東京】

極細ペン1本で復興の花と現実 池田学さん、日本橋で個展

池田学さんの作品「誕生」。絵の中にいろいろなモチーフが隠され、近づくと見えなかったものが見えてくる=中央区で

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 一本のペンだけで、息をのむような絵画世界を描き出す画家池田学さん(43)の初期から最新作を集めた個展が、日本橋高島屋(中央区)で開かれている。池田さんの故郷佐賀、金沢を巡回し、佐賀県立美術館では来場者記録を塗り替える九万五千人が訪れた。東京展は巡回の終点で、十月九日まで。 (森本智之)

 池田さんが使うのは、インク瓶にペン先を浸しながら使う極細のペン。たとえばトラの顔を描く時に毛皮の毛を一本ずつ描いていくような緻密な作業を繰り返し、時間をかけて見上げるような大作を生み出す。

 下書きはせず、事前に構図も決めない。ひらめきを大切にし、それでいて一度引いた線は修正しない。

 本展の目玉の「誕生」は縦三メートル、横四メートル。東日本大震災をきっかけに描いた最新にして最大の作品だ。

 がれきの山から伸びる一本の巨木。伸ばした枝には満開の花が咲き誇っている。一見、災害からの復興を思わせる。ところが近づいてみると、花だと思ったものは花ではない。仮設テント、放射能のハザードシンボル、手を合わせて祈るシルエットなど。「離れているとハッピーエンドに見えても、本当の花を咲かせるには時間がかかる」。そんな思いを込めたと話す。

 この絵は、米国ウィスコンシン州チェゼン美術館で公開制作し、三年三カ月かけて完成させた。その間、二人の娘が生まれ、高校時代の親友をがんで失った。その子たちや友も絵の中に描いている。個人的な感情も重ねながら複雑な現実世界も描き出した作品だ。

 

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