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【東京】

<マンガ家たちの東京物語> (5)さいとう・たかを(国分寺) 

名曲喫茶「でんえん」=国分寺市で(中野晴行さん撮影)

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 JR中央線・国分寺駅は北口再開発工事の真っ最中。大型商業施設などが入る二棟のタワーマンションが間もなく完成するそうだ。

 大阪の貸本マンガの人気者だったさいとう・たかをが仲間の辰巳(たつみ)ヨシヒロ、松本正彦とともに国分寺に足を踏み入れたのは、一九五八年春。駅前だけは商店や民家が集まっているものの、外には畑や空き地が広がる風景を見た三人は「ここは東京か? 地の果てと違うんか」とつぶやいた。

 大阪で出版社の倒産騒ぎなどに巻き込まれた彼らは、ゴタゴタを逃れるように上京。先輩マンガ家の久呂田(くろだ)まさみが紹介する東京の貸本出版社で作品を描くため、久呂田が用意したアパート・寿荘に引っ越してきたのだ。

 折しも世の中は貸本ブーム。一泊いくらで本を貸す貸本屋が全国に三万軒もあったとされる。三人は東京でも精力的に貸本向けのマンガを描いて、さいとうの「台風五郎シリーズ」は若者たちの人気を集めた。五九年一月には大阪の仲間も誘って「劇画工房」を設立。その後、大阪のメンバーが上京するようになり、東京の若いマンガ家たちも集まって、国分寺は<劇画村>の様相を呈するにいたった。

 彼らは喫茶店などにたむろしては、マンガ論を戦わせたり、映画の感想を語り合ったりした。

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 そんな時代をしのばせる場所が、駅前の通称・大学通り裏にひっそりと残っていた。名曲喫茶「でんえん」。クラシックの流れる店内に座ると、若き日の彼らの声が聞こえるような気がした。(敬称略、中野晴行=マンガ研究家)=随時掲載

<さいとう・たかを(1936〜)> 和歌山県生まれ、大阪府で育つ。代表作に「ゴルゴ13」「鬼平犯科帳」など。

<なかの・はるゆき> 1954年生まれ、大阪府出身。漫画の研究、編集などを手掛ける。京都精華大客員教授。

 

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