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【東京】

<東京人>永井荷風−愛すべき散歩者 「ひかげ」の女性に光

浅草ロック座の楽屋で出演者たちに囲まれる荷風=昭和25年2月撮影(所蔵・永井壯一郎、協力・市川市)

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 引っ越しが多かった永井荷風が一番長く住んだのは、麻布市兵衛町の二階建て洋館「偏奇館」です。昭和二十年三月九日の空襲で焼失するまでの約二十五年間を過ごしました。次に長く住んだのは、三十四年四月三十日に七十九歳で亡くなるまでの約十三年間を過ごした千葉県市川市です。

 荷風が晩年を過ごした市川市の市川市文学ミュージアムでは、「永井荷風展−荷風の見つめた女性たち」を開催中です(来年二月十八日まで)。男性中心の社会で女性の地位が低かった時代に、荷風は芸者や私娼(ししょう)など立場の弱い女性を主人公に小説を書き続けました。小説のモデルとなった女性たちの生活ぶりを事細かに『断腸亭日乗』に記し、ときに彼女たちと情を交わすも、作品の「ミューズ」として新たな息吹を与えます。

 例えば、新橋芸者の駒代が主人公の『腕くらべ』(大正五年)のモデルの一人は、結婚もした新橋芸者八重次(後の藤蔭静枝)。『つゆのあとさき』(昭和六年)の女給君江のモデルの一人は、荷風の生涯の恋人と言われた関根歌。『ひかげの花』(昭和九年)の私娼お千代のモデルの一人は、芝浦の待合で逢瀬(おうせ)を重ねた私娼黒沢きみ。

 その時代の「ひかげ」の女性たちは、一方でその時代の風俗や社会的背景を体現する象徴でもあります。永井荷風展では、小説の主人公や交情を深めた女性たちから、「観察者」荷風の作品世界に触れます。 (「東京人」副編集長・田中紀子)

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 「都市を味わい、都市を批評し、都市を創る」をキャッチコピーに掲げる月刊誌「東京人」の編集部から、原則毎週日曜日に都内各地の情報をお届けします。

 【12月号主な内容】快楽を肯定するひかげの女たち 川本三郎▽武士道と少女道 持田叙子▽荷風の背中を追いかけて、『断腸亭日乗』を歩く 壬生篤▽新発見! 晩年の創作ノート 川島幸希▽エッセイ 林文子、大竹昭子、岩下尚史

 問い合わせは、「東京人」編集部=電03(3237)1790(平日)=へ。

 

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