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【東京】

<東京NEWS2017>(6)都内初の重要文化的景観へ 帝釈天と地元 二人三脚

正月を迎える松も飾られ、にぎわう柴又帝釈天参道=葛飾区で

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 映画「男はつらいよ」の主人公「寅(とら)さん」の故郷として知られる葛飾区柴又。国の文化審議会は十一月、都内で初めて、「重要文化的景観」に選定するよう答申した。公開から半世紀近い「男はつらいよ」第一作のDVDを見直すと、今とあまり変わらない印象の町並みが映し出された。

 気が付いた違いは、現在は電柱がなくなり、舗装された参道が石畳になっている点。この変化は約三十年前、懐かしい「昭和の町並み」を守っていこうと、参道の飲食店や土産物店などの商店主らが歩み出した「証拠」だ。

 古き良き町並みの保全を後押ししてきたのは、江戸時代から庶民に信仰され、景観の核でもある柴又帝釈天(たいしゃくてん)(題経寺)だ。「御前様」と呼ばれて慕われ、二〇一四年に死去した先代住職の望月良晃(りょうこう)さんは、町の開発を懸念し、商店主らと協力して無電柱化などの実現に尽力してきた。

 重要文化的景観は、建物、町並みといった「物」だけでなく、暮らしや営みも重視している。柴又でいえば、参道に店が軒を連ね、店頭で昔ながらの対面式で商品を売る様子もその一つ。だが、にぎわいがなければ、違った姿になっていたかもしれない。

 誘客の土台を支えてきたのも帝釈天だった。「寅さん」人気や、一九八〇年代前半の演歌「矢切の渡し」の大ヒットで観光客は大きく増えたが、寺はただ柴又に人がやって来るのを待つだけではなかった。

 寺の広報の須山保さん(65)は、寅さん以外のテレビなどのロケも「昔からメディアへの開放をやってきた」と話す。映像などを通じて、帝釈天だけでなく町を広く知ってもらう機会になると捉えているからだ。

 寅さんを演じた渥美清さんは、九六年に亡くなった。映画の終了後も、商店主らも料理や和菓子の味とともに、「壊さない開発」で「昭和の町並み」を磨き上げる努力を重ねてきた。

 「帝釈天だけが文化財になっても、ビルの谷間にあったのでは趣がない。お寺が存続していくためにも、周辺を含めて景観を維持しようというのは、ありがたい」と須山さん。門前町とともに寺が歩んできた意義を強調する。

 京成電鉄によると、重要文化的景観に選定される見通しが明らかになった十一月十七日の前後一カ月を比べると、柴又駅の乗降客数は高い伸び率だという。参道でも来訪者が増えているという声を聞く。

 迫る東京五輪・パラリンピックに向けて、都内各地で開発のつち音が響いている。寅さんが愛する柴又は、これからの町づくりを、問い掛けている。 (飯田克志)

 

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