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【東京】

<東京NEWS2017>(7)上原景観基金 寄付ににじむ市民の誇り

今月16日に開かれた集会後、市民に囲まれる上原公子さん(左から2人目)=国立市で

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 「行政のトップが訴えられ、市民が賠償金を肩代わりした例は世界でもないのでは。歴史に大きな光をつくっていただいた」。元国立市長の上原公子(ひろこ)さん(68)は、今月十六日に市内で開かれた集会で支援者らに感謝した。

 同市が高層マンション建設を規制した条例を巡り、市が業者に支払った損害賠償金を上原さん個人が負担するよう命じた判決が、昨年十二月に確定した。元金と利息で計約四千五百万円。私は「なぜ元市長が個人として責任を負わねばならないのか」と疑問を抱いた。上原さんの市長時代を取材し、市民の意向を受けて景観保護に取り組む姿を見ていたからだ。

 やはり疑問を持つ人は多かったのだろう。「上原さんだけに責任を負わせてはならない」と、二月に「くにたち上原景観基金一万人の会」ができた。会は全国でカンパを募り、上原さんも集会などで協力を訴えた。

 五月に元金約三千百万円を市に弁済。残る利息分の約千四百万円も、全額弁済の目標としていた十一月二十一日の二日前に集まった。寄付をしたのは延べ約五千人。帯封付きの一万円札の束を市役所に持ち込む会のメンバーの姿に、意地と誇りを感じた。

 わずか九カ月余りで多額の寄付が集まったのはなぜか。背景には、市民が景観保護に取り組んできた歴史がある。JR国立駅周辺の整然とした街並みは大正末期、東京商科大(現・一橋大)の誘致に合わせて整備された。その景観を守る市民運動は一九五二年、都内初の「文教地区」指定につながり、その後も運動は続いた。

 「あんたに感謝される筋合いはない。自分のことだからやっているんだよ」。協力を呼び掛けるための街頭活動に感謝する上原さんへ、参加者の一人が返した一言だ。多くの市民の思いを代弁する言葉だろう。

 「市民の支持を得て施策を実現しようとする首長や、住民自治を萎縮させかねない」。上原さんは、米軍基地を巡って政府と対峙(たいじ)する翁長雄志(おながたけし)・沖縄県知事らを念頭に、判決の影響を懸念する。だが、今回のカンパによる肩代わりの成功は、萎縮の懸念を払拭(ふっしょく)する材料になるのではないか。

 上原さんと弁護団、支援者は、長年の闘いをまとめた「国立景観裁判・ドキュメント17年」(税抜き千三百円、自治体研究社)を出版した。問い合わせは一万人の会のEメール=office@ueharafund.org=か、ファクス=042(573)5947=へ。 (服部展和)

 

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