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【東京】

<ひと ゆめ みらい> かいぼりで希少種復活 環境保全に取り組むNPO職員・久保田潤一さん

ミゾフラスコモが見つかった宅部池のほとりで、環境保全の大切さを語る久保田潤一さん=東村山市で

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 「きたー」。一昨年の夏、都立狭山公園の宅部(やけべ)池(東村山市、約六十アール)で、NPO法人NPObirth(バース)自然環境保全部長の久保田潤一さん(39)は、浅瀬に茂る藻を見つけて歓声を上げた。後に、絶滅が危ぶまれている希少な淡水藻「ミゾフラスコモ」と判明。都内では初めて確認されたことも分かった。「狙いが的中した」と笑顔で振り返る。

 発見の半年前、水質改善や外来種駆除を目的に池の水を抜く「かいぼり」を実施していた。「昔のようにきれいな池を取り戻そう」の掛け声で、各地の環境保全団体メンバーら約八十人がたも網やたらいを使って生き物を採取。オオクチバス(ブラックバス)など外来種を駆除する一方、ヨシノボリなど在来種は保護して池に戻した。

 「かいぼりの目的には水生植物の復活もあるんです」と久保田さん。環境悪化で生育できなくなった植物の種や胞子は、池の底で長期間、眠っていることがある。泥をかきだすと空気に触れて発芽し、きれいになった水のおかげで成長できるという。「井の頭池のイノカシラフラスコモはその一例。宅部池は江戸時代につくられたとされる農業用ため池で、かつて生育していたミゾフラスコモが復活したのでしょう」

 小学生のとき、開発による自然破壊を目の当たりにして「将来は自然を守る仕事をしよう」と考えた。福島県郡山市の実家近くの森は、クワガタなどの昆虫をはじめ、多種多様な生物が息づく遊び場だった。木々が切り倒され、更地になっていく様子を見て心を痛めた。

 茨城大理学部を卒業後、環境保全団体、環境コンサルティング会社を経て現職に。普段はbirthを含む五団体でつくる「西武・狭山丘陵パートナーズ」のスタッフとして、狭山丘陵にある都立公園の環境保全に努めている。その手法の一つがかいぼりだ。

 これまで関東を中心とする二十カ所以上の池や沼で、地元の人たちにかいぼりのアドバイスをしてきた。昨年始まったテレビ東京の人気番組「池の水ぜんぶ抜く」にも専門家の一人として出演。「かいぼりブームが自然に関心を持つきっかけになれば」と期待する。

 「絶滅危惧(きぐ)種すべてを危惧しなくてすむ普通の種にすることが夢」という。「次の世代に引き継ぐ必要がある。正しい知識やノウハウを伝えていきたい」と語った。(服部展和) 

 ミゾフラスコモは環境省のレッドリストで絶滅危惧I類に分類。詳しい生育場所は不明だが、1950年代の文献でも全国11カ所に限られていた。宅部池のミゾフラスコモは昨年8月に専門家が鑑定し、10月に公表された。冬季は確認できないが、夏には緑色の固まりが見られるという。かいぼりが行われた都立井の頭恩賜公園(武蔵野市、三鷹市)の井の頭池では一昨年、絶滅危惧種のイノカシラフラスコモが約60年ぶりに復活した。ミゾフラスコモに関する問い合わせは狭山公園パークセンター(管理所)=電042(393)0154=へ。

 

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