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【東京】

<東京人>東京「夜」散歩 暗渠の川面が地面に漂う

藍染川の暗渠に沿って伸びる「谷根千」のよみせ通り=台東区で

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 かつての川の跡を辿(たど)ること。暗渠(あんきょ)散歩の何割かは、妄想でできていると思っています。微(かす)かな痕跡をたよりに、見えないものを見いだす…。この行為は「夜」と好相性ではないでしょうか。夜には、五感が開かれます。昼には聴(き)こえなかったマンホールのせせらぎが耳に届き、皮膚は湿り気をより感知し、崖や階段はより迫力をもって現れます。

 東京で夜の暗渠といって思い浮かべるものは、たとえばよみせ通り。谷根千エリアの、道灌山下からへび道の手前あたりまでの商店街です。そこにはかつて、藍染(あいぞめ)川が流れていました。傍らに広がる田んぼにホタルが舞い、カエルが合唱し、川では貝や小魚などが捕れたといいます。しかし都市化が進み、よみせ通りあたりの藍染川は大正九年ごろに暗渠化されました。そしてその上に、夜店が敷き詰められました。毎夜遅くまで人通りが多く、足音で子どもが寝つけないほどだった、と言う人もいます。

 現在、夜のよみせ通りはしっとりと静かです。通行人が減るため蛇行が際立ち、黒い地面に思わず夜の川面を投影します。夜の静けさと暗がりは、かつての風景を想像するのにちょうど良いのです。

 藍染川は不忍池に注ぎますが、水の流れはまだ続き、忍川、三味線堀、鳥越川と名を変えて隅田川、そして海へ。暗渠は、どこまでも辿っていきたくなるような、底力を持っています。夜の暗渠散歩、はたしてあなたは無事帰ってこられるでしょうか。 (吉村生)

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 「都市を味わい、都市を批評し、都市を創る」をキャッチコピーに掲げる月刊誌「東京人」の編集部が、3月号の記事をもとに都内各地の情報をお届けします。問い合わせは、「東京人」編集部=電03(3237)1790(平日)=へ。

 

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