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【東京】

<ひと ゆめ みらい>多摩地域 大切な場所 国立市が舞台の映画制作・中川龍太郎さん(28)

ロケ地の一つの谷保第四公園で映画について語る中川さん=国立市で

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 満開の桜と菜の花を背景に、立ちすくむ喪服姿の女性。「世界が真っ白になる夢を見た…」とモノローグが重なる。公開中の映画「四月の永い夢」の冒頭シーンだ。恋人を亡くして心を閉ざしていた女性が、一通の手紙をきっかけに動きだし、やがて前を向いて生きていこうとする。

 映画監督中川龍太郎さん(28)のこの新作は、昨年のモスクワ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰をダブル受賞するなど高く評価された。大学時代に親友を亡くした自身の経験を元にした作品で、思い出深い国立市で八割以上のシーンを撮影した。

 高校時代の二〇〇七年に「詩集 雪に至る都」(文芸社)で詩人としてデビュー。慶応大文学部に進学した。同じクラスの親友の影響で、ジャンリュック・ゴダール監督の作品など欧州の古い映画を鑑賞するように。「映画はあらゆる才能を生かせるし、大切な場所を記録しておける」と、仲間と自主制作を始めた。

 卒業前、その親友が亡くなった。

 前作「走れ、絶望に追いつかれない速さで」(一六年)は「彼のメモワール(回想録)」という。かつて親友からもらったメールの一節をタイトルにした。「落ち込んでいるとき、彼はいつも励ましてくれた」

 親友を亡くした主人公の男性と自身を重ねた前作に対し、「四月の永い夢」は一歩引いて恋人の女性の目線から描いた。親友の死後、劇場で見た高畑勲監督のアニメ映画「かぐや姫の物語」(一三年)に心を揺さぶられ、泣いた。かぐや姫の声を担当した女優朝倉あきさんを主人公の滝本初海役に起用。作品全体のせりふは少なめで「冒頭シーンのように映像による表現に努めた」という。

 国立市には高校時代、父がクリニックを開業したのをきっかけに通うようになった。「四月の永い夢」には、JR国立駅から南に延びる「大学通り」などの街並みに加え、主人公が働く「大作そば店」や洋菓子・喫茶の「白十字」、銭湯「鳩(はと)の湯」などレトロな雰囲気の店が登場する。人々が歴史を刻んできたまちの姿を記録しておくためだ。休日は、多摩地域を中心に、弁当と水筒を持って散歩やハイキングに出掛けている。ロケ地選びに役立つという。「これからも大切な場所である多摩地域を舞台に映画を撮り続けたい」(服部展和)

 2012年に自主制作映画「Calling」がボストン国際映画祭で最優秀撮影賞を受賞。ほかに「雨粒の小さな歴史」「Plastic Love Story」「愛の小さな歴史」の作品がある。監督だけでなく脚本も手掛ける。15年に知人らと町田市で映画制作会社「Tokyo New Cinema」を設立。同市が創業支援した。「四月の永い夢」の制作には国立市フィルムコミッションが協力。8月まで全国約30カ所で上映を予定している。

 

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