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【東京】

慰安婦テーマの絵本 制作の苦悶、映画で迫る あす北区で上映会

「花ばぁば」と制作過程を描く映画「わたしの描きたいこと」のDVDを紹介する木瀬貴吉さん=北区で

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 従軍慰安婦をテーマにした韓国の絵本「花ばぁば」の日本での出版(5月)を記念し、著者のクォン・ユンドクさんを追ったドキュメンタリー映画「わたしの描きたいこと」(2012年)の上映会が30日、北区の書店「青猫書房」(赤羽2)で開かれる。絵本を翻訳出版した区内の出版社「ころから」が主催する。 (中村真暁)

 「花ばぁば」は、田島征三さんら日本の絵本作家四人が呼び掛けて、日中韓の絵本作家が制作した平和を考えるシリーズの一冊。一〇年に韓国で出版されたが、日本では準備を進めていた童心社(文京区)が出版を断念した経緯がある。

 韓国人監督による映画は、ころからが日本語版DVDを制作、先月発売した。絵本制作の過程で、クォンさんが韓国の他の絵本作家と意見交換するシーンでは、日本軍を示す国旗や旭日(きょくじつ)旗を描くか否かで議論が白熱。クォンさんは「日本軍(を強調する)より、(慰安婦は)ある所で起きた恐ろしい話だと言いたい」と主張する。映画には、日韓の絵本作家や出版関係者、モデルとなった元慰安婦のシム・ダリョンさんらへのインタビューも盛り込まれている。

 ころから代表の木瀬貴吉さん(51)は映画について、「日韓の問題に閉じ込めるのではなく、さまざまな戦争で起こってきた性暴力という普遍的なテーマを、どう絵本にしようとしたかを描いている」と語る。

 上映会は、午後五時から。入場料五百円。一般向けDVDは三千五百円(税別)で、ころからの通販サイト「コロブックス」で販売中。問い合わせは、ころから=電03(5939)7950=へ。

◆語りにくいテーマ タブー化が問題

 映画「わたしの描きたいこと」には、「花ばぁば」の出版を断念した童心社関係者へのインタビューも盛り込まれ、努力を重ねながら、出版できなかったのはなぜかを考えさせられる内容となっている。

 映画の冒頭で童心社の編集長は、日中韓の絵本シリーズについて「歴史認識など違う中でうまくいくのか、という気持ちはあったが仲良くしなければならない。意義がある」と語る。一方で、花ばぁばを巡っては「歴史認識や性の問題を踏まえると、日本の子どもたちにはテーマ的に理解しにくい」などとし、出版の延期が繰り返された。

 童心社は本紙の取材に、出版断念の理由について、「慰安婦関連の研究者に意見を聞くと、強制連行の描き方や慰安所での兵隊の位置で、公文書などに証拠がない事象が描かれている」と説明。クォンさんには修正を求めたが、折り合えなかったという。酒井京子会長は「モデルとなった慰安婦女性は高齢で、証言に矛盾があるのは仕方がない。しかし、文書などで証拠が確定されていないことを描くのは、正しいことではない」と話す。

 女たちの戦争と平和資料館(新宿区)の渡辺美奈館長は「強制連行が日本軍の文書に残っていないのは当たり前で、証言が事実でないとは言えない」と言う。一方で、「日本にとって戦争加害は難しいテーマ。慰安婦問題はものすごく気を使わないと扱えないと思われているのが現実で、どんどんタブー化されている。この本を一時期出版できなかったのは、日本の問題でもある」と指摘する。

 

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