東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 東京 > 記事一覧 > 7月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【東京】

<東京人>東京縄文散歩 暗渠の先に見える風景

井草川源流部には、漫画家園山俊二の絵による縄文の生活を描いた看板がある。写真は切通し公園=杉並区で

写真

 どこから水が湧いていたろうか、水はどこを流れてゆきたいだろうか。暗渠(あんきょ)散歩とは、そんなことを考えながら、水の痕跡を求める小さな旅です。

 縄文遺跡は川沿いに多く分布しています。多摩川、石神井川、善福寺川。湧き水を飲用し、川にすむ生きものをとり、食らう。湧水と川は縄文の人たちにとって、かけがえのない生活の源でした。そしてそれは暗渠、すなわち現在は見えない川についても、あてはまるのです。たとえば大森貝塚のすぐ近くには鹿島谷という谷を流れる川がかつてあり、代々木八幡遺跡や鶯谷遺跡のふもとには渋谷川の支谷が刻まれています。杉並区を流れ、妙正寺川に合わさる井草川流域にも、井草式土器を擁する井草遺跡を含む、多数の遺跡が存在します。現在、わたしたちが訪れる縄文遺跡の近くに川が見当たらないとしても、おそらく間近に谷地形はあり、そこにはきっと水の痕跡があることでしょう。その水面を、縄文人は眺めていたことでしょう。

 もしかすると暗渠を歩くという行為において研ぎ澄ます感覚は、水を探して歩く縄文人のそれと近いのかもしれません。昭和四十年前後にふたをされ、現在はその多くが、住宅街の中の緑道や小径になっている川の跡。見上げれば食べられる植物が生い茂り、見下ろせばぽこぽこと水が湧き、その先に小魚が泳ぐ……暑い夏でも多少は涼やかになる(かもしれない)、縄文の景色を夢想しながらの暗渠散歩はいかがでしょうか。 (吉村生)

     ◇

 「都市を味わい、都市を批評し、都市を創る」をキャッチコピーに掲げる月刊誌「東京人」の編集部が、8月号の記事をもとに都内各地の情報をお届けします。問い合わせは、「東京人」編集部=電03(3237)1790(平日)=へ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報